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特進クラスの期末考査 『淫らな実験をレポートせよ』
【学園物 官能小説】

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特進クラスの期末考査 『淫らな実験をレポートせよ』act.8-8

「足元の鞄に入ってる」
右手に煙草を挟み、早くしろと言わんばかりに指打ちする。
「これ?」
鞄の手前に入っていたシルバーのオイルライターを翳すと、煙草を口にくわえて着けろと示唆する。
ちょうど赤信号になり、ごりっと擦って火を着けるとそっと近づける。オレンジ色の炎を先端に受け、煙草の独特の香りが車内を満たしていく。
「手、震えてんのか」
ライターの火が揺れていた。
「別に。寒いだけよ」
「怖いんだろ」
「な訳無いでしょ」
眉間に皺を寄せた愛美の髪の毛に、ふと大きな手が伸びた。
「被ってろ」
髪の毛から滴る雨水を拭うと、運転席に掛けてあった背広の上着を寄越した。
確かに雨で体温は奪われつつある。渡された上着は煙草と香水の匂いが混じり、大河内の所有物だとアピールしていた。
「臭い」
「減らず口も叩けるなら大丈夫だな。ほら、お前の家はどっちだ」
「え、あ、S駅方面、だけど……」
「俺ん家より遠いな」
軽く舌打ちする大河内を愛美は訝しげに見る。
「ちょっとそれ着て我慢しろ。タオル代わりに頭から被っておけ」
愛美は背広の上着だということに躊躇ったが、さっさとしろ、と急かされて濡れた頭からベールの様に被った。さながら鼠男みたいだと眉をしかめる。
……それにしても。
愛美は大河内の態度につい悪態を吐いてしまう。
「気持ち悪い」
「車酔いか?」
「あんたが。何企んでるのよ」
「心外だな。いつも親切・丁寧だぜ?俺。痛くないって定評あんの」
「……最低」
結局セクハラ発言ばかりだ。こんな男に遠慮も感謝も必要ない!愛美は心からそう思い、大河内のアパートに着くまで窓の外を眺め続けた。





「服、ありがと」
「ん」
熱いシャワーを浴び、大河内の私服を借りた。何の偏屈も無いTシャツにスラックス。だが、愛美が着ると非常にぶかぶかで服に着せられているようだった。
「制服、クリーニングに置いて来て大丈夫だったのか?」
愛美がシャワーを浴びている最中に、意外な事に大河内がクリーニング屋まで出向いたらしい。
「はい。ワイシャツもスカートも代えがありますから。あまり着たくはないですけど、非常事態なので」
ベーシックな物を選ぶ愛美はチェックのスカートに少し抵抗があるらしい。

シャワーを浴びて火照った体を涼やかな潮風が冷ましていく。
大河内の家は学校から二区間程離れた海沿いのアパートだった。東窓を開けると波の音が絶えず聞こえ、アパートの周りも住宅が密集しているために静かだ。
そんな住まいを愛美は似合わないと思った。もっと埃臭く煩い、常にエンジン音の絶えない街中に住んでいそうだと思っていたから。
「もう遅いな。親には連絡したのか」
「いつも遅いから。家では殆ど一人だから気にしなくても」
「だから捻くれてるのか」
鼻で笑って大河内が煙草を燻らせる。交互にシャワーを浴び、大河内も新しいシャツにジャージという部屋着に着替えていた。
だらしないけれどネクタイにワイシャツにスラックス、そんな教師的格好ばかり見慣れていたので愛美は直視出来ずにいた。
「別に捻てなんか」
ムッとしながらもモゴモゴと返す。いつもの威勢が無いのは軽く緊張してるのか、そう察した大河内はこっそりと笑った。


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