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特進クラスの期末考査 『淫らな実験をレポートせよ』
【学園物 官能小説】

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特進クラスの期末考査 『淫らな実験をレポートせよ』act.8-18

「また逃げるのか」

その声は地を這うように低く、愛美の背筋を凍らせる。掴まれて漸く目を合わせると、怒り顔を歪める大河内がいた。
「俺に気持ちを傾けてる癖に、他の男に逃げるのかって聞いてんだ」
「な…?他、?」
「そうだ。男なら誰だって構わないんだろ、自分を後回しにしたって」
何かつじつまが合わない。真っ直ぐ表情を伺うと、怒っている、と言うよりはもはや……

「ヤキモチ?」

眉間に皺が寄る。怒っている、のではなく、拗ねてる表情だ。自分の気持ちばかり溢れて気付かなかっただけで、あの時も……
「まぎらわしいのよ、この馬鹿」
「なんでお前が切れるんだ。しかも馬鹿って言うな。加えてヤキモチなわけねぇだろ」
「普通にヤキモチ、もしくは嫉妬って言うのよ。ここ数日のあたしの苦しみを……」
「つまり?」
言いかけて止めてしまった愛美にニヤニヤしながら大河内が近付く。
引き寄せられ、無理無理目を合わせられる。まだ太陽の在る時間帯で見つめるのが気恥ずかしい。
「あの夕立の帰り道は、素直で可愛かったんだがな」
「気が狂ってたんです、きっと。だから」
「嘘つき」
「じゃあ、あんただって…!!!」
「俺?」
「別人みたいに……」
言ってからハッと口を塞ぐ。今思い付いた言い返しは恥ずかしい。完璧恥ずかしい。どうしようもなく。これ以上もなく、気がある、って言わんばかりだ。
「何、別人みたいに、どうなんだよ。言えよ」
困った。
愛美は定まらない視線を持て余す。余裕染みた大河内は答えを知っているだろう。それなのに意地悪で。

「俺を、好きになったんだろ?」
「……っ」

言葉が詰まる。有り得ない、って直ぐさま返していた言葉が詰まる。
嫌いだって。
冗談じゃないって。

………言えない。
のは、つまり。

「惚れた、だろ?」
「ち、違う」
「嘘つき。ちゃんと目を見て言えよ」
顎を掴まれて無理矢理正面から見据えられると、顔がどんどん赤らんでくる。
「俺のこと、嫌いじゃないだろ」
「き、嫌いじゃないけど、誤解しないで」
早口に撒くしあげ、唇を噛む。認めたくない気持ちに支配されそうで……。
「好きだって言えよ」
「…いや……」
「意地っ張り」
「そう言うあんたこそ」
「惚れたんだろ」
「……いい加減に」
その目は真剣で。
言い訳を繰り返す自分が滑稽に思えた。
「人を好きになる理由なんて些細なもんだ」
さっきから言い出せない言葉は、理由、なのだろう。
そう思うと少し胸の内が軽くなる。震える唇が開いた。
「別人みたいに優しかったから……仕方ないでしょ?」
「そうか、それじゃ仕方ないな」
見つめ合って笑ってしまう。意地っ張りの二人が折り合いを着けるのは、仕方ない、から。
唇が近付く。
意識して目を閉じる。
愛美にとって不意打ちじゃないキス。
唇に感じる柔らかい感触。閉じた瞳の奥で、愛美は眩暈を覚えた。

風邪だから、では無く、

多分それは………





FIN


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