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伊藤美弥の悩み 〜受難〜
【学園物 官能小説】

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恋人達の悩み5 〜MEMORIAL BIRTHDAY〜-3

 不意に龍之介が吹き出したので、美弥は不思議そうな顔をする。
「あ……ごめん」
 吹き出した事を謝ると、龍之介は美弥の唇へキスを落とした。
 ゆっくりとした腰使いを少しずつ加速させながら、龍之介は回想する。
 付き合い始めた頃は感じやす過ぎる体をとにかく何度でもイかせるのがいい事だと思い込み、それこそ三度も四度もイかせていた。
 だが次第に数度もイッた美弥の体力の消費ぶりに気が付き、今ではあまりイかせないように気を付けている。
 いちおう進歩してるなぁと思い、龍之介は吹き出してしまったのだった。
「んぁふ……!」
 美弥が高い声を出すのと同時に背中へ爪を立てて来たため、龍之介は痛みで回想から覚める。
 見れば美弥は達する寸前の切なく歪んだ顔で、秘裂の方も同様にきつく収縮していた。
 回想していたせいで歯止めをかけなかったため、容赦なく美弥を攻め上げていたらしい。
 龍之介は息を吐き、美弥をイかせる事に集中する。
 頭の中は、罪悪感で一杯だった。
 回想が過ぎて、美弥の事をほったらかしていたのだから。
「ごめん、な……ごめん……」
 美弥が先に達すると龍之介は逆らわずに射精し、精液を噴出させる。
「は、あ……!」
 最後の一滴まで残さず美弥の中へ注ぎ込み、龍之介は少女を抱き締めた。


「ね、ねぇ?」
「ん〜?」
「ど、どうかしたの?」
 お肌の触れ合いが終わった後、嬉しくて幸せで美弥が龍之介にぺったりと抱き着いていちゃいちゃするのが、いつものパターンだ。
 だが今日は、何故か龍之介が抱き着いている。
 よりにもよって肌を合わせている最中に美弥の事をほったらかしてしまった罪悪感が、龍之介にこんな行動を取らせていた。
 そして美弥は、珍しいパターンに目を白黒させている。
「別に……僕がいちゃいちゃしてたら、まずい?」
「まずくないけど……」
 呟いた美弥は、細かい詮索をしない事にした。
 何があったかはよく分からないが、龍之介がくっついてくれるのは嬉しい。
 手の平が優しく背中を撫でているのが嬉しいし、髪や額や頬や唇にキスが降るのも嬉しい。
 自分が嬉しいならそれでいいじゃないかと、思う事にしたのである。
 そう納得すると、美弥は龍之介にぺったり抱き着いた。
 厚い胸板に頬を擦り寄せると、熱い時間の余韻を満喫する。
 いつもと変わらないその態度が、今の龍之介には痛い。
「ん……」
 しばらくして、美弥が寝息を立て始めた。
 眠り始めた美弥へ、龍之介は囁く。
 先程台詞を奪われたせいで、言えなかった言葉を。
「美弥……もうすぐ君の、誕生日でしょ?」


 面接試験をパスした龍之介は、試験の三日後からシフトに入る事になった。
 新人教育係という女性マネージャー(幸いにもジンマシンは出なかった)に一通りのレクチャーを受け、実際にフロアへ行く。
 フロアに出ると、女性マネージャーは一人のアルバイトを呼んだ。
「高遠君」
 人一倍てきぱき働いていた少年が、返事をしてやって来る。
 歳は同じくらい、背丈は百六十五センチ内外といった所か。
 明るめのブラウンに染めた短めの髪とやや目尻の吊り上がった一重瞼が印象的な、凜としているが故におねえさん方から可愛がられそうなタイプである。
「ほいマネージャー、何でっしゃろ?」
 少年の口からぽろっと飛び出した大阪弁に、龍之介はほんの少し驚いた。
「紹介するわ。今日から入ったアルバイトの、高崎龍之介君」
 女性マネージャーは、簡潔に龍之介を紹介する。
「ほいほい」
 少年は龍之介を見て、にぱっと笑った。

 左側の犬歯だか八重歯だかが、露になる。
 ますます、おねえさんにモテそうだ。
「俺、高遠紘平(たかとお・こうへい)や。よろしゅうに」
 自己紹介して、片手を差し出して来る。
「高崎龍之介です。よろしくお願いします」
 龍之介も自己紹介し、高遠紘平の差し出した手を軽く握った。
「高遠君は大阪のチェーン店でアルバイトをしていたの。最近入ったばかりだけれどお店の勝手は分かってるから、色々教わってね。高遠君、色々教えてあげてね」
 紘平は、ぴっと敬礼する。
「分っかりましたぁっ!高遠紘平、誠心誠意頑張らせていただきますっ!」
 女性マネージャーは頼もしそうに頷き、事務所の方へ行ってしまった。
「いーのかオイ……?」
 紘平はフッと鼻で笑う。
「えーんや。あの人、忙しいんやから。上を支えるんは、下の務めやで」
「はぁ……」
 詳しい事情を知らない自分が口を差し挟む事ではないのだろうと思い、龍之介は口をつぐむ事にした。
「代わりに、上のもんは下のもんをいじめたらアカンけどな。ま、仕事は『習うより慣れろ』方式やな。なるたけフォローはするさかい、頑張りや」


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