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伊藤美弥の悩み 〜受難〜
【学園物 官能小説】

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恋人達の悩み5 〜MEMORIAL BIRTHDAY〜-15

「龍之介、よく耐えてるなぁ……」
 思わず呟くと、瀬里奈が吹き出す。
「なぁに、それが不満なの?」
 美弥は首を横に振った。
「大満足よ。けど……」
「ど?」
「……何か面白くない」
 なかなか複雑な乙女心である。
「ほいっと!デコレーションシュークリームにマロンクリームパフェ、お待ち!ゆっくりしてってな!」
 紘平がやって来て、注文した物を置いていった。
 にぱっと笑いかけていくのも忘れないのだから、おねえさん方のハートを鷲掴み、である。
 昔は慣れ親しんでいたその笑みに違和感を感じるのは、感情的に告げた別れのせいか。
「……あ〜あ」
 美弥は、座席の背もたれに体を預ける。
「ほんっとに私、彼が好きなんだなぁ」
 素直に龍之介と呼ばないのは、周囲の女性客の耳を気にしての事だ。
「何、惚れ直したの?」
「うん」
 からかいにあっさり頷かれ、瀬里奈はがっくりうなだれる。
「素直でけっこー」
 言って瀬里奈は、マロンクリームパフェにスプーンを突き立てた。
「あ、そう言えばさ」
 マロンチップをちりばめたクリームを飲み込み、瀬里奈は言う。
「あたし、あ……」
「ぎぁうっ!!」
 突然龍之介の悲鳴が聞こえたので、二人はそちらを向いた。
 ばっちりメイクでお色気たっぷりのOLが、龍之介の腕を掴んでいる。
 龍之介は顔に恐怖の表情を浮かべ、OLの手を振りほどこうとあがいていた。

 がたっ!!

 龍之介を守ろうと、美弥は思わず立ち上がる。
 例え自分が龍之介の恋人とばれ、後で周囲からどんな目に遭わされようと、今は龍之介を守らねばならない。
 が。
「お客様。大変失礼でっけど、ここはファミリーレストランでっせ。従業員を見て楽しむんは結構でっけどホストクラブやフーゾクでないんやし、お触りは厳禁どっせ」
 紘平がOLと龍之介の間に割り込み、その腕を振りほどいた。
「そんなにお触りがしたいて言うんなら、仕事上がったら俺がプライベートで付き合って差し上げてもよろしいんどっけど?」
 瀬里奈が鼻を鳴らす。
 それを聞いた美弥はひょっとしたらもっとごたつく事を望んでいたのかと思い、眉をしかめた。
「……!」
 止められたOLは味方を得ようというのか、周囲をきょろきょろ見回す。
 だが抜け駆けした者に周囲は冷たく、ひそやかな嘲笑があるばかりである。
 OLは舌打ちし、そそくさと席を立ってこの場を後にしようとした。
「おっきゃっくさまー。お勘定、お忘れでっせー?無銭飲食で取っ捕まえてもよろしいんでー?」
 揶揄たっぷりな紘平の台詞にOLは冷笑の中真っ赤な顔をして足を止め、紘平の手にお札を握らせる。
「おつりはいらないわよっ」
 声を荒げてOLは言い、紘平はチェシャ猫のような笑みを浮かべた。
「おおきにー。恥の意識がないならまたお越しくださいませー」


 この後紘平は、事の次第を聞いたマネージャーから『事情はどうあれお客様に恥をかかせるなんて言語道断!!!』と、こってり絞られた。


「いっやぁ、クビにならんかっただけでもめっけもんやで」
 言ってカラカラ笑う紘平へ、龍之介は素直に謝った。
「ごめん。迷惑かけて」
 紘平は帰り仕度をしつつ、にんまりと笑った。
「気にすんなや」
「そう言ってくれると助かる」
 紘平は、肩をすくめる。
「……なぁ龍やん。一つ聞いてええか?」
「何?」
 帰り仕度を完了した龍之介は、不思議そうに紘平を見た。
「何で女に腕掴まれただけで、あんな悲鳴上げてん?あんなん、たいしたこっちゃないやろ?」
 龍之介は、重いため息をつく。
「……信じられないかも知れないけど、僕は真実を言うから」
「うン?」
「僕は……女性恐怖症なんだ」
 たっぷり五秒は沈黙が落ちた。
「……はいっ?」
「女性恐怖症。美弥以外の女は母でさえ、生理的に受け付けない」
 ふと紘平を見ると、何とも言えない生温い目でこちらを見ている。
「……ま、信じられないのも無理ないけどさ。僕は女性恐怖症を和らげるか女性に慣れたくて、ここへアルバイトに来たんだ。バイト料は、二の次三の次。それが真実」
 懇切丁寧兄ローンを完済した後は、お金を貯めてどこかへ旅行したりするのも悪くないだろうが。
「疑うんなら、美弥に聞いてみればいい。美弥もわだかまりはなくなったみたいだし、たぶん答えてくれると思うよ」


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