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奴隷じゃんけん
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奴隷じゃんけん-2

「チャーハンとサラダでいいだろ?」
「ん〜…まぁいっか」
文句を言うな。
作りながら話す。
「いい加減彼氏作りやがれ。料理できて掃除してくれてあんたみたいなのを養ってくれる聖人君子に限り無く近い人を」
「それは私への侮辱ととって構わないかな?」
お姉さんはいつもオレが料理する姿を見ている。
冷蔵庫の中にあった賞味期限ギリギリのハムを切り、フライパンにぶちこんだ。
「私だって彼氏欲しいけど、そんな人いないもん」
「だろうな。いたらオレになんか色々頼まないからな」
チャーハンを炒めながらふとお姉さんを見ると、なんかニヤニヤしていた。
「なんだよ」
「いや、なんかキミって私の保護者みたい」
「なんだそれ」
微笑みながら盛り付けをする。
味見すらしてないハムだけのチャーハンと、本当に一人分しかないウサギの餌みたいな寂しいサラダの完成。
「ほらよ」
テーブルに運ぶ。お姉さんが座る。
「いただきまーす」
うまそうに食べるお姉さんを見て、安心した。
「保護者か、本当にそうだな。できの悪い娘をもった気分だよ」
「キミは今日は私の奴隷なんだから、生意気言うの禁止〜」
なんだそのルール。
まぁ黙って従うことにしよう。
今日を、最後にしよう。
「もうさ……、じゃんけんやめねぇ…?」
お姉さんの手が止まる。
「……マヨネーズとってきて」
「………へいへい」
冷蔵庫からマヨネーズを取り出した。
「じゃんけん、絶対やめないからね」
マヨネーズをお姉さんの前に置く。
「やめたら、こうやってご飯作ってもらえないし」
「じゃあオレがもし引っ越したらどうやって自活するんだよ」
「さぁ」
ムカつく女だな。
だいたい料理はできない掃除もしないで、よく一人暮らししようと思ったな。
ま、言わないけど。
「オレはあんたの奴隷になんのはもう嫌だ」
「えっちもたまにさせてあげてるのに?」
「そういうのは好きなもん同士でするもんだろうが!!!」
「じゃあ何が不満なのよ!?」
「今のこの関係だ!!オレはあんたの奴隷は嫌だ、それに保護者って言われるのもうれしくないね!」
言ってやった。言ってやったぞ。
彼氏でもないのに、お姉さんの部屋に出入りするのも、夜一緒に寝るのも、もう辛いんだ。
彼氏にしてくれないんなら、意味ないんだよ。堂々とさせてくれないなら、こんな関係いらない。
「……しょうがないなぁ」
お姉さんはスプーンを置いた。
「明日からもう奴隷じゃんけんしない」
わかってくれたか。
「でも今日が終わるまでは私の奴隷ね」
「………あぁ」
ま、ルールだからな。
「じゃ、最後の命令」
「…なんだよ」
お姉さんはオレを睨みながら言った。
「保護者が嫌なら、私の配偶者になりなさい」
………は?
「わかったわね」
「ちょちょちょちょちょっと待て!!!配偶者になれって意味わかってんのか!?」
「当たり前でしょ?夫婦になりなさいって言ってんの〜」
「ふっ…ざけんな!!!そんな命令…!」
「嫌なの?」
言葉に詰まる。
嫌なわけ、ないじゃないか。たった数ヶ月だけど、一緒にいて、幸せだったんだ。じゃあなんで今拒否してる?
意地だ。見栄だ。ただの強がりだ。
お姉さんより上に立ちたいっていうだけ。
それだけのオレに、否定の言葉が出てくるわけがない。
だから一生懸命にひねり出した言葉が、あまりにも幼稚なんだ。


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