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掃除当番
【学園物 恋愛小説】

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掃除当番-1

クラスメイトの加藤と、私は中庭にいた。
掃除当番で、中庭の掃き掃除。
夏休み前の掃除とあって、いつもより少し、長い時間をかけなければならなかった。

加藤とは、出席番号が近いせいか、掃除当番や日直で同じになることが多いので、その時だけ少し話をしたりする程度の付き合いだった。

私の中で、加藤といえば、学年一モテる男の称号を得るほど、すごく人気であることや、それなのに彼女はいないという、どれも人から聞いた噂話のイメージだけで、実際のところはよく分からない、よく知らない、そんなクラスメイトの一人だった。

今日だって、掃除をしながら「暑いね」とか「1学期終わるね」とか、そんな他愛もない会話を交わしただけ。
お互いに深く踏み込んだ話はしない。
だから、加藤にとっても、私は“よく分からない、よく知らない”そんなクラスメイトのはずだった。

それなのに…―

加藤は突然、私に「好き」だと言った。

好きだと言われても、私はやっぱり加藤の事は、ほとんど知らないわけで、それは向こうにとっても同じはずなのに…。

それでも、加藤は私を好きになったのだ。

『…か、加藤?』

『俺、海原の事が本気で好きなんだ。
だから…良かったら…。』

言葉は途切れたけれど、何を言いたいのか、それは汲み取ることが出来た。


少しの沈黙が流れ、ようやく私は口を開く。


『…私、加藤の事、ほとんど知らないと思う。
うまく言えないけど…好きになるとかの段階じゃないんだと思うのよ。
だから、気持ちは嬉しいけど、そういう風には見れないな。』

加藤をまっすぐに見つめ、正直な気持ちを伝える。

“もしかしたら傷つけたかもしれない”

そう、不安に思っていると…

『そっか…。
はっきり言ってくれて良かった。
海原のそういうとこが良いよな。』

私の答えに、加藤は笑って『ありがとう』と言った。

加藤のことはあまり知らなかったけれど、その時の、スッキリとしたような笑顔が印象的に心に残った。

そして、確実に私の中の加藤への印象が“噂の中の人”から“気になる奴”へと変わったのだった――


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