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ラプンツェルブルー
【少年/少女 恋愛小説】

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ラプンツェルブルー 第4話-2

「い、いえ。そんな…別に…あの…」

返事に困っている僕に、お姉さんは、「少し待っててくださいね」と言い置いて彼女の椅子まで戻り、彼女の手を牽いて僕の元に帰ってきた。

「ほら、千紗もお礼を言って」
「………」
並ぶと改めて思うのは、全く似通わない姉妹だということ。

黒髪ながら、柔らかい春のような印象の小柄な姉。
薄い色素を集めながらも、どこかシャープな冬の印象のすらりとした長身の妹。
むしろ姉妹の順が逆とさえ思ってしまう。

「ごめんなさいね。まだショックが大きいみたいで…。改めてお礼に伺いますから、住所を…」
「いえ、確かにショックだと思いますから気にしないでください。あと、お礼なんていいですから」
押し黙った妹を見兼ねたお姉さんが「でも」と言い募った時だった。

「…に…なんて……から」
危うく彼女の声を聞き逃がすところだった。
お姉さんも僕も彼女に視線を集める。
「千紗?」
俯いた彼女のヘーゼルナッツ色の瞳が、初めて僕を映した。
「別に助けて欲しいなんて、頼んだ訳じゃないんだから!」

刹那、バケツの水を浴びせられたような不意打ちに、思考が停止する。

初めて耳にした彼女の声は、思うより低いものの、両の鼓膜を強く叩いた。
「千紗!なんて事言うの!」
「髪なんて切られてもどうってことなかったのよ!なのに、わざわざ危ない目に遭ったりして、どうかしてるわ」

僕の中で、何かが凍り付く。
現実でもイラつかせるヤツだったって事か。
今まで想像するだけで満足してたわけだし…。

僕の中で潮時を告げる声がする。


姉に厳しく責められる彼女に投げる一瞥は、自分でも分かるくらいに冷たかった。

「あぁそう。じゃあさ、背中に貼っとけば?『お節介無用』ってさ」

深々と頭を下げる姉の横で、僕を見つめる妹の双眸は冷たい炎を帯びていたのだった。


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