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やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

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やっぱすっきゃねん!UF-8

「藤野さん。 ひとつ質問なんですが」

「私にですか?」

 表情を変え、何事かと身構える一哉。 対して葛城は、少し緊張してるようだ。

「今朝の長距離トレーニングもそうですが、四股やスクワット、腕立てなど、とにかく背筋や下半身重視のトレーニング。 それに昼食を省くなど、全て藤野さんが考案されたとか。
 でも、キャッチボール以外、ボールを使った練習がなされてませんが、大丈夫ですか?」

 野球経験者ならしごく当然の意見だ。 一哉は言い含めるよう葛城の質問に答える。

「彼らのトレーニングは、私が現役の頃にやっていた方法と最新の理論を加味したやり方です。
 野球は下半身と背筋を重視するスポーツですから、シーズンオフの10〜翌年 1月末までは今の練習を続けようと思ってるんですよ」

 ジッと聞き入る葛城。 その目は大学時代、必死に白球を追っていた頃のようだ。

 一哉の説明が続く。

「 2月からはピッチャー以外、長距離トレーニングを半分にし、守備と打撃を行います。 そして 3月には守備連携や打撃連携など作戦面の練習をやります。
 後の 3ヶ月間は練習試合を沢山こなして経験から覚えさせる段取りです。 それと昼食を省くのはメジャー流のやり方で、その分早く終らせて部員達を休ませてやろうという事です」

 葛城は驚いた。 一哉の頭の中では、来年の大会までの練習方法が、すでに逆算されているのだ。 おまけに体調の事まで考えて。

 練習の話は聞いた。 だが、葛城にはどうしても、もうひとつ確認したい事があった。

「藤野さん。 もうひとつだけ良いですか?」

「どうぞ」

 葛城の目に先ほどとは違う真剣さが宿る。

「澤田さんの事なんですが、あれほど一生懸命やってるのに、真剣さが足りないと仰っているとか。 理由を教えて下さい」

 強い決意で訊いた葛城。 だが、その答えは意外なモノだった。

「葛城さん。 高い才能を持った人は、人並み程度の努力でもソコソコの成績は残せます。
 だが、ソイツが人並み以上の努力をした場合どうでしょう?
 持ってる才能の何倍にもなって表れると思うんですよ」

「じゃあ、藤野さんは澤田さんの存在能力はあんなモノじゃないと?」

 葛城の質問に一哉は強く頷いた。

「私はこれでも 5年間彼女を見てきました。 間違いなくポテンシャルは 1級品です。 だが、本人は気づいていない。だから私は歯痒いんですよ」

「そうだったんですかぁ…」

 葛城は頷きながら大きく息を吐いた。

 一哉の言葉が続く。

「私の役目は、夏までに部員の力を最大限引き出す事です。 葛城さん、アナタには永井さんの参謀として細かい作戦面も選手達に叩き込んで頂きたい」

 その言葉に不安な表情を見せる葛城。


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