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『本当の自分……』
【少年/少女 恋愛小説】

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『終わりの闇、始まりの光』-13

(金曜日…功刀由佳)

明日、私は東京に行く。その目的は言うまでもなく、魅也に会う為……

結局、自分の気持ちを落ち着けるのに一ヶ月もの時間をかけてしまった。それは、いろいろなコトが起き過ぎてしまったから……

今にして思えば、私は心のドコかで魅也に気付いて欲しかったのかもしれない。少し考えれば、わかっていた筈だから。由佳と書いては、いけないコトぐらい……

そして、弥生の告白……。彼女と魅也の間で何があったのだろう……。弥生は何も言わず、ただ一言だけ
『自分の気持ちに気付いてしまったから……』
そう言って淋しそうに笑った。

いつもと同じ筈の毎日が、少しづつ輪郭を変えていく……

あれ以来、私達は少しだけ距離を置くようになった。だけど、彼女を嫌いになった訳じゃない。むしろ、前より大切にさえ思う。

だからこれが、本当の友達としての距離なのかもしれない。
「由佳、落ち着いて聞いて……。魅也があなたに逢いたいって言ってるの。」
二週間前、そう言い出した弥生に私は驚いた。彼女を呼び捨てにしているコトもそうだったけど、何より弥生から言われたコトに私は驚いていた。
「私からもお願い。彼女に会ってあげて。」
「何があったの弥生。どういうコト?」
「会えばわかるわ。由佳の気持ちが落ち着くまで待つって魅也は言ってくれたから……」
「でも……」
どんな顔をして会えばいいの?魅也はすべてを知ってしまったのに……。おそらく私は困惑の表情を浮かべていたのだろう。俯いた私の手が握られ、驚いて顔を上げると彼女はじっと私を見つめていた。
「由佳、私をまだ親友と思ってくれているなら信じて。今の彼女は決してあなたを傷つけたりはしない……それだけは約束出来るから……」

弥生の眼差し……。それは、嘘を言ってるようには思えない。
「時間を…ちょうだい……弥生。」
だけど、私にはそうとしか答えられなかった。

考えが纏まらず、悪戯に数日が過ぎ、やがて私の意識は一つの答えを形作る。

私も覚悟を決めなければならない時が来たんだと…

「弥生……。日にちはあなたが決めて。会うわ、魅也に……」
私は電話で弥生にそう告げた。


(土曜日…神原弥生)

私と由佳は今、東京に向かう電車の中にいる……

あの日、私に何があったのか由佳は一言も尋ねて来なかった。ただ私を抱き締めて『頑張ったね、ありがとう』って言っただけ……

何故?本当はそう聞きたかった。だけど、その理由を彼女がそうしたように私も尋ねない。
何となくその方がよかった気がしたから……
「本当にいいの?」
窓の外を見つめたまま無言でいる由佳に私は声をかけた。彼女はこっちを見ると、静かに微笑む。
「大丈夫よ、私はあなたを信じてるから。それとも、あれは嘘?」
「嘘じゃないわ!!」
思わず私は叫んでしまった。
「それなら心配しないで。私は大丈夫だから……。それよりあなたの方こそ大丈夫なの?」
「私が?どうして?」
「なんか辛そうな顔してるから……」

違うの由佳……。辛いんじゃないの。切なくて、哀しいだけよ……

そんな言葉を私は飲み込む。
「私は……平気よ。」
それだけ言って、私は小さく溜息をついた。


二週間前、私の言葉に由佳は激しく動揺していた。

魅也に会ってあげて……

私からそんな言葉を聞くとは思っていなかったのだろう、口には出さないけれど戸惑う表情がそれを物語っていた。私と魅也が、あの時話していたコト……今の由佳にはまだ話せない。

私と魅也は女として生まれ、女として育った。当り前よね、女なんだから……

だけど、由佳は……

男として生まれ、男として育ち、そして女になってしまった。

彼女の中に、最近見え隠れする女性らしさを私は感じる。由佳が、女として生きるコトを決意してから、特にそれを感じるようになった。

だけど、その一方でそんな自分を嫌悪している彼女がいる。

まだ男[ヨシキ]である自分が、女[ユカ]になるコトを拒んでいる……私には、そう思えてならない。

幾万の言葉を紡いだところで、女として人を愛するコトなど、今の彼女には理解出来ないだろう。だから私は何も言わなかった。


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