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秋と春か夏か冬
【学園物 恋愛小説】

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秋と春か夏か冬〜18話『過去と思い出』〜-2

「い、行くぞ。早くしないと日が暮れるし…」

ちがう。本当はこんな顔の夏輝を見たくなかっただけ…。こいつの泣き顔は見たくない。なぜか自分でもわからないが、自然と反応してしまう。

「…うん♪やっぱり恭介は優しいね♪」

そんな恭介の気持ちも夏輝に筒抜けのようで、いつもの夏輝の笑顔に戻っていた。



そして電車の中。乗客のほとんどがジロジロ見てくる。
(そうか…こいつは芸能人だった。学校の中ならまだしも、外では目立つよな…)
視線に耐えられなくなって、夏輝に小さい声で聞く。

「なぁ、明らかにバレバレだぞ…だいたい眼鏡や帽子はどうした?芸能人の常識だろ」

「だって〜…帽子は洋服に合わなかったし、眼鏡は好きじゃないんだよ〜!」

白いワンピース姿の夏輝は、子供のように足をバタバタさせた。

「…まぁ過ぎたことを言ってもしょうがないか。で、どうする?次で降りるか?変な言い方だけど、男と2人でいるところはまずいと思うんだが…」

昨今の世の中はゴシップの嵐だ。こんなところを見られたら何を書かれるか、たまったものじゃない。恭介はそう思った。だが当の夏輝は…

「別にやましいことないから平気だよ♪恭介ならスキャンダルも問題なし!それに今は…芸能人である前に、恭介のことを好きな…1人の女の子だもん♪♪」

さらっと笑顔で言いきる。

(好きって…)

見慣れない私服姿だからか、公衆の面前だからか、それとも嬉しかったからか……恭介はいつも以上にドキドキしてしまう。

パチパチパチパチ…。

恭介が返答に困っていると、夏輝のセリフに感動して、全乗客が拍手を送っていた。拍手に混じって『良いわねぇ若い子は』とか『夏輝ちゃんにあんな羨ましいこと言われるアイツは何者だ?』などの声が聞こえてくる。

恥ずかしさのあまり、恭介と夏輝は次の駅で降りていった。まぁ恥ずかしがっていたのは恭介だけなのだが…。




「で、降りちゃったわけだけど……夏輝が行きたいところはまだ先だよな?」

「ううん、ここで合ってるよ♪」

「へ?……だってここは…」

30分ほどたち、着いた先は山が見える少し田舎の風景。お店などはほとんどなく、何もない場所だ。なにかこの地に用があるか、よほどの物好きでないと、絶対に立ち寄らないだろう。
だが、俺はそんな場所に小さい頃から足を運んでいた。何度も何度も…。


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