『理不尽な話』-2
「なんと傲慢な子だろう! 自分の立場をわきまえず、私に意見するとは!」
神様はその場で足踏みします。すると、泉の色がどんどん黒く変わっていきます。
「なんと哀れな子だろう! 一言でも謝れば許してやったのに!」
泉は真っ黒になって、どろどろとなっています。それは変な臭いがして、具合が悪くなってしまいます。
「一生お前はこの罪を償うがいい! お前がしでかしたことを、一生後悔するがいい!」
神様は、泉に戻るのではなく、空へと戻っていきました。
◆
この話は、あっという間に小さい村に広がりました。
神の子が神の怒りを買った。なんということだ。なんてことをしてくれたんだ。村人たちは口を揃えて嘆きます。
村の畑の野菜は腐り、家畜は次々と死に、村には奇病が流行りました。
少年は家に引きこもるようになりました。家の窓は、石を投げられ全て割れました。隙間風がびゅうびゅう吹いてきます。
両親は、少年を置いてどこかに行ってしまいました。
少年が助けた友達は、村の人たちと一緒に少年をいじめます。
それでも少年は、この村に居続けました。
小さな村の誰もが少年を忌み嫌いました。
それでも少年は、村人たちを嫌おうとは思いませんでした。
村で、ようやく作物が育ち始めたある日のことです。少年はいつもの通り、夜中にこっそりと出かけ、村の畑に食べ物を盗みに行きました。
少年は泣きながら野菜を一つ盗みました。
悲しくて泣いたのではありません。
あまりにも自分が情けなくて泣いたのです。
しかし、見つかってしまいました。
見つけたのは、少年の友達だった男の子です。
「お前は……」
男の子が、汚物でも見るかのような目で呟きます。
男の子が見たのは、汚い服に身を包み、髪はぼさぼさで、顔には黒い汚れがべっとりとついている少年の姿でした。