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星降る夜の神話
【少年/少女 恋愛小説】

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星降る夜の神話 其の壱-7

何故抵抗できなかったんだろう。しようと思えば、いくらでも出来た。…でも、壱岐の私を見る瞳が哀しそうで、抵抗する気持が消えてしまった。

ドクン

 でも、胸の苦しみは消えない。それ処か益々苦しみが広がるばかり。

「銀杏?どうかした?」
 ずっと考えていたのか、由香が心配そうに私を覗き込んできた。
「…え?あっ、ゴメン。何でもない」
こんな事由香に相談出来る訳がない。だって、由香の好きな人は、壱岐なんだから。
「『何でもない』って顔じゃないよ?」
「……」
「お早う」

ドクンッ

「壱岐くん…っ。お、お早うっ!」
由香の緊張したような声が何故か物凄く頭に響いた。
「お早う、七塚(ナナツカ)と石野」
「……お早う」
壱岐の顔を見ずに返事を返す。今、一番会いたくないという時に限って会ってしまう。
「…私、ちょっと気分悪いから休んでくる」
「えっ!?大丈夫??」

ー由香には悪いけど、此処には居たくない。

「大丈夫。先生に言っといて」
一緒に付いていくと言いかねない顔の由香を置いて、教室を足早に出る。

    ◇

「失礼しまー…す」
からからから…

 保健室のドアを開ける。授業中なので、他の教室に響かないよう、静かに。
「…あれ?居ない?」
 いつもなら座って(眠って)居る筈の保健医:青山正登(アオヤママサト)※通称正くん(28・♂)が居なかった。
「珍しい」
 いや、かなり失礼な発言なのだが。いつも授業中は生徒があまり来ないからと眠っているような人だ。こんな絶好のサボり時間に居ないのが不思議と言ってもおかしくない。
「ま、いっかぁー」
取り合えず休もうとベットに近付く。正くんが帰ってきたときに言えば良いのだから。
「う゛――っ頭痛いぃ―――」
 色々有りすぎて、パンクしてしまいそうだ。ぐるぐると頭の中がミックスされている。
「うぇ…」
「あれ?本当に気分悪かったりした?」
 不意に隣のベットから声。

ーこの、ムカつくくらい清々しい声音は…、

「正くん!?其所に居たの!?」
「ぅおっ!叫ぶな…」
 派気のない声。心なしか起き上がってカーテンを開けた正くんの顔は青い。
「……………………………。二日酔い?」
「ビンゴ」
 保健医の癖に、いったい何してんだこの人は。
「で?」
「は?」
 突然聞かれ、意味も分からず単語で返す。
「何か相談あんだろ?お前が此処に来たって事は」
 流石は叔父。母と同じように私の心理を見事に突いてくる。だから、一連の出来事を話した。その結果、
「あー…。お前、壱岐の事好きだな」
思い掛けない返事が戻ってきた。
「ー…はぁ?何でそうなるの」
「『胸が苦しい』=『恋』だろうが」

ー『恋』?コレが?

「え?だって、今までこんな…」
「これが本当の『恋』だよ」
年長者特有の含み笑いで返された。


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