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星降る夜の神話
【少年/少女 恋愛小説】

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星降る夜の神話 其の壱-4

「ちょっとぉ!!何で付いて来る訳!?」

由香と途中で別れ、一人で歩いていた…のだが、
「一人の夜道は危険ですよ?」
にやにやと笑い、壱岐が自転車を漕いできた。
「……由香の方に行けば良いのに。危険なのは、由香の方だよ」
「遠い」
「遠くても!…遠くても危険な方に行くべきだよ」
「嫌」
考える間もなく、壱岐が答えた。そんな壱岐を見、溜め息を付く。
「少しは考えたら?」
「考える必要ねぇもん」
「い…」
「好きだ」
『壱岐』と言おうとした所を、遮られる。思いも寄らない言葉で。
「ー…へ?」

ースキ?

ぽくぽくぽく

頭の中で木魚が鳴る。

「えぇぇ―――――――っ!?」

ー何ですと!?

「何もそこまで驚かなくても」
苦笑したように壱岐が私を見た。
「ぅえ?えっ?ちょ、ちょっと待って」
 頭の中をぐるぐると欠き混ぜられた様で綺麗に整理が出来ない。そんな私の様子を面白そうに見ながら、
「石野、俺と付き合って?」
壱岐が笑う。

ーツキアウ…、付き合う。

付き合う
【名】?
〔互いに行き来して〕親しく交わる。交際する。

ーや、そうではなくて。

「だ、駄目っ!!」
「…『駄目』?『嫌』じゃなくて?」
「ー…あ。『嫌』!」
「遅いよ?」
 くすくすと愉快そうに壱岐が笑う。
「…や、待って?私、壱岐の事好きじゃないし、」
「知ってる」

ガシャン
自転車が停められた。
「どれかと言うと、『どうでも良い』?」
「何気に酷いね。石野」
「だから、」
壱岐の言葉を無視して進める。
「駄目…と言うか、無理。ー…壱岐?」
何も言わずに黙り込んだ壱岐を見、さっき叩かれた頬に触れようとした。と、
「ぅわきょっ!?」
いきなり引っ張られ、壱岐の腕の中に収められてしまう。
「い、壱岐?」
「…っは、」
哀しそうな、…笑い声。

ーやば。

私、弱いんだよねぇ。こういうの。
「壱岐…」
「黙って」
「………」

 壱岐の腕の中で、考える。曾祖母の願いは何だったのだろうか。『星降る夜』とは、何なのだろう。

「壱岐…、」
「うん」
「付き合えないよ」
「…うん」
「私なんかより、良いコはいくらでもいる」
「……」
「…由香とか、もっといっぱい―…」
「石野」
「うん?」
 腕の力が強くなった。痛くはない、ただ、ただ…胸が苦しくなった。何故かは分からないけど。今まで一度も経験したことのない苦しみを。
「壱岐……?痛いよ」
 何も言わない壱岐を、下から覗き込むようにして見る。
「…うん。」
答えたのは、それだけ。けれど、腕の力は緩まない。胸の苦しみも消えない。
「帰ろう?」
耐えきれず、そう言うと壱岐の腕から無理矢理出る。

「ー……石野」
「送ってくれる?」
出来る限り笑顔で壱岐を見た。
「…ああ」


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