投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

「命の尊厳」
【ホラー その他小説】

「命の尊厳」の最初へ 「命の尊厳」 49 「命の尊厳」 51 「命の尊厳」の最後へ

「命の尊厳」後編-9

「私、アナタにお礼言わなきゃ」

諒子が草原に目を向けて言った。その言葉の意味が分からない由貴が訊き返す。

「お礼って?」

「アナタのおかげで、私を殺した相手が分かったんだもの」

諒子は微笑み掛ける。
それを見つめる由貴も、にっこりと笑って見せた。

「私ね。アナタのおかげで生きていられるの。そのアナタためなら何だって出来るわ…」

「…それもあと少し……」

諒子は一瞬、哀しい目をすると、囁くほどの小さな声で言った。

「えっ?何か言った」

聞き取れなかった由貴が訊き返すが、諒子は再び笑顔を見せると、

「何でもない…」

そう言って芝生に寝転がった。
由貴も真似して横になる。
蒼天に浮かぶ白い曇。心地よい日光が降り注いでいる。

暖かな空気に包まれ、至福の時を過ごすうちに、2人はいつしか眠ってしまった。




どれほど眠っただろうか。由貴はふと、目を覚ました。
目に映ったのは先ほどまでの蒼天では無く、白い天井と蛍光灯の明かりだった。

(…えっ?諒子さん……)

となりに寝っているはずの諒子の方を見ると、母の京子がイスに腰掛け、自分の腕には点滴が付けられていた。

ようやく頭が覚醒してきた由貴。そこは病院の処置室だった。

「ああっ!気がついたのね」

安堵した表情で京子が由貴に近寄った。

「…お母さん。ここって…」

「刑事さんが来られてすぐに、倒れたのよ」

由貴はベッドの中で記憶を遡る。

(…そういえば、刑事さんに写真を渡された瞬間から…)

「ちょっと待っててね。あなたが気づいたら呼んでくれって言われてたのよ」

京子は慌てて処置室を後にする。
その後姿を由貴は眺めた後、再び思いに耽った。

(…今までは兆候が現れてから意識が飛んでいたのに。
先刻のはまったくそれが無かった……)

言いようの無い不安が由貴の頭の中をよぎった。


その時、パタパタと足音が処置室へと近づいて来た。


「命の尊厳」の最初へ 「命の尊厳」 49 「命の尊厳」 51 「命の尊厳」の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前