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記憶の欠片
【悲恋 恋愛小説】

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記憶の欠片-3

『クローン』といっても従来の技術ではない、新しい技術──まるでコピーのように、姿形はもちろん、年齢、性格全てを被験者そのままの形で作り出す──である。

最初は半信半疑だった。しかし、もしそうなら、悠がガンになる前の状態で帰って来てくれるなら…。そう思って悠を提供した。

そして、5年後、悠は再び俺の前に帰って来た。



初めは驚いた。
悠があの頃のままいたのだから。
クローンなんて成功する訳がない、と諦めていた俺にとってそれは衝撃的だった。



しかし、悠の名前を呼ぶと『彼女』はこう言った。

「『悠』?違うわ、私はそんな名前じゃない」



そこで俺は気付いた。いくら何もかもが悠そのものであっても、『悠』は5年前に死んでいて、目の前の『彼女』は『悠』ではないということに。





今、『彼女』の体はガンに侵されている。
悠のクローンだけあって、ガン細胞までコピーされていたようだ。

大丈夫、今度は失敗しない。

入院はさせなかった。『彼女』が幸せに逝けるように、最期のその時まで側にいてやれるように。





「悠…お前は幸せだったか…?」


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