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恋の奴隷
【青春 恋愛小説】

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恋の奴隷【番外編】―心の音D-1

Scene5―あの頃のように

「夏音、ごめんね…笑ったりして…」

ホームルームが終わり、教室が活気を帯びてざわつく中、柚姫が今にも泣き出しそうな顔でしょんぼりと肩を落としていて。

「ううん…柚姫は悪くないもの。私こそ冷たくしてごめんなさい。私もこの前柚姫のこと思い切り笑っちゃったしね。おあいこよ」

私が肩をすくめて、ぺろりと舌を出しおどけると、柚姫は眉を下げつつも、ふふっと柔らかい笑みを零した。

「ほら、早く行かないと優磨君がへそ曲げちゃうわよ!」
「でも…」
「でもじゃなーい!じゃあ今度パフェでも奢ってもらうから!」

くるりと柚姫の身体を反転させてその背中を押すと、柚姫は控え目にコクリと頷いて、ぱたぱた足音を立てて教室を出て行った。
柚姫に悪いことしちゃったなぁ…。でも、もとを辿れば、全部あの男のせいじゃない。奴の顔が頭に浮かんで、再度怒りの炎が燃え上がり、私はぎゅうと唇を噛んだ。


重い足取りで昇降口を出ると、いきなり後ろ手を引かれて。驚いてそちらを振り返ると、今一番見たくない顔が眼中に飛び込んできて、私はあからさまに表情を曇らせた。

「あ、あの…さっきはごめん!やっぱり怒ってる…?」
「そんなの聞かなくたって分かるでしょ」

眉根を寄せて睨み付ける私に、奴はバツが悪そうに目を伏せた。

「もう私に構わないで」

私は冷たくそう吐き捨てると、掴まれた手を振り払って身体ごと顔を背けた。

「やだよ!好きな女に構わずにいられるわけないだろ!」
「ふざけないでよ」
「本気だよ!」

声を張り上げて懲りずにまだそんなことを言っている奴に呆れつつ、ちらりと目を向けると、柄にもなく奴は悩ましげに眉根を寄せて、目尻を赤く滲ませている。

「い、いい加減なことばかり言わないでよね。好きなんてそう簡単に口にされて、信じるわけないでしょ!」
「…信じてくれないかも知れないけど。だけど、俺は出会った頃からお前のことが好きだったよ」
「ばッ、馬鹿なこと言わないでよ!大して話したこともないじゃない」
「やっぱり覚えてないか…」
「…え?」

奴は寂しげに瞳を揺らして。

「この顔に見覚えない?」

胸ポケットから一枚の写真を取り出し、それを見て私は息を飲んだ。

眼鏡をかけた太っちょの男の子─

「ノロ!?」

ノロは…私の家の近所に住んでいて、『ナッチー、ナッチー』っていつも私の後ろをついて回っていた。幼い頃から私は男の子達とばかり遊んでいたから、ノロも当然、その輪の中にいたのだけれど。ノロは、駆けっこ、ボール蹴り、何やらしてもダメダメな運動音痴君で、からかわれることもしばしば。それでも、いつだってニコニコ笑っていて。ノロは小学校に上がる少し前に引越してしまい、それからは、全く音沙汰がなかったのだけれど…。
ちなみに、のろまだから“ノロ”って呼ばれていたわけ。


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