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アパートメント
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アパートメント-1

私たちが出会ったのは半年前の夏だった。

仕事が一段落ついて、これから昼食をとって買い物へいこうかと考え、地下鉄の駅へ向かう途中のことだった。


よろよろとふらつきながらこちらへ歩いてくる若い女の子がいた。

遠目からでも真白いTシャツに負けないくらいの血の気が引いた顔色をしているのが分かった。


彼女と通り過ぎる時に思わず肩に手を置き、

「大丈夫ですか?」

と尋ねてしまったほどだ。


すると彼女はゆっくりと俯いた顔を上げこちらに目を向けた。


ーーその瞬間私は息をのんだ。

黒くて長い髪、白い肌、少しつりがあった眼は黒目がちで澄んでいて……。

香織(カオル)に瓜二つの彼女に目を奪われた。

「だ……い………」

小さな声が途切れたのと同時に意識が途切れ、倒れ込みそうになったのを抱きかかえ病院へ連れて行った。


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診察した医師曰わく、過労と脱水症状だから休ませることが一番でしょうとのことだった。


点滴を受けてベッドに寝ている彼女をみていると、思わず泣いてしまいたくなるくらいの懐かしさやら嬉しさやらが複雑に混ざり、手を握りしめ起きるのを待った。

脱水症状くらいで大袈裟だが、このまま目を覚まさなかったら……と心配でたまらなくなった。

しかし、そんな私にかまわず目を覚ました彼女の第一声は、「うーん、よく寝た………あんた誰?」で、天まで浮き上がった気持ちは一気に谷底まで突き落とされるがなんとか返す。

「君が倒れたところをここへ連れてきた片瀬斗織(かたせとおる)といいます」

それにもかかわらず、
「そうなんだ……金ないのにまいったな。初対面でなんですけどお金かしてもらえませんか?必ず返しますから」
へらっと笑いながら口開けば、口は悪いは態度はでかい。
名前も名乗らないこの度胸。
怒りや呆れよりも感動すらする。

なにより勝手に作り上げていた清楚なイメージがビルの崩壊シーンのごとくガラガラと粉砕されていく。


内情を聞けば、亡くなった両親の借金を払うために食べる暇もなく朝から晩まで働いていたせいで倒れてしまったらしい。

ただの通りがけとはいえ、香織のこともあり情にほだされた私は、お金を貸す代わりに返すまで一緒に住むということを条件にした。


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