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サディスティックに愛されて
【少年/少女 恋愛小説】

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サディスティックに愛されて-5

 その身体は、とっても冷たくて、とっても小さくて、そして…とっても愛しくて……首に回した腕でそっと抱き締めた。
 冷たい雨が二人を包み込み、二人が重なった部分だけが暖かい。
「中途半端な優しさならいらない。辛くなるだけ…」
 と沙希が消え入りそうな声で呟く。
「言っとくけど、俺は同情なんてしない。『家にいるのが辛かったらウチに来い』なんて言わない」
 明らかに、その言葉を期待していたというように、寂しそうな表情を浮かべて瞼を閉じる沙希。
 俺は、身体を離し、沙希の前に回った。
 俯いたまま、落胆の色を隠せないその顔を覗き込んで、雨で頬に貼り付いた彼女自慢のアッシュブラウンの髪の毛を手ではらう。
「ばぁか…俺はおまえの『オトウト』なんて嫌なんだよ!だって、本当に『オトウト』になったら、結婚できないだろう?」
「隆文…」
 今にも零れそうな涙…
 俺は沙希の手をとって、まるでホストのように片膝をついて跪いた。
 そんな俺を、驚きの眼差しで見下ろす沙希を見上げて、そのまま掴んだ沙希の手の甲に、そっとくちづけた。
「その代わり、お嬢様。辛い時や、悲しい時はいつでも呼び出してください。お嬢様の為なら、たとえ火の中、水の中。どこでも即座にかけつけます」
 あの時『かしずいて欲しい』と言った彼女の為にひれ伏してみせる俺を見て、エヘヘと恥ずかしそうに笑った沙希に、思いっきり安堵した。
「やっぱ、あんたMだったんだ」
「あぁ、何とでも言ってくれ。おまえの為なら僕(しもべ)でもM男でも何にでもなってやるさ。だから、もう…そんな顔すんな」
 そう言ながら、見上げた俺の視界から、ふいに沙希の姿が消え、次の瞬間フワリと落ちてきた彼女の身体が、俺の身体を優しく包み込んだ。
「お人よし…だからあんたはバカだっていうのよ」
 吐き捨てられた沙希の罵声は、何故かとても優しく、俺の耳と身体の芯に響いた。
 なんだか嬉しくて、雨に打たれながら笑いが止まらなくなった俺は、沙希の身体を抱き締めて笑い転げていた。
 そんな俺を見下しながら『バッカじゃないの?』を連呼する彼女に『もっと言って』と笑って答えた俺は、彼女の言う通り本当にMなのかもしれない。
 まぁ、それでもいいや。
 沙希が喜ぶことなら、下僕どころか、犬にでも猿にでも成り下がって見せる!
 そんな風に思ってしまうなんて…
 本当に、全くもって…恋とは妙なものである。

 沙希以上に『かしずく』という言葉に魅せられた男が、ここにひとり…
 サディスティックな女王様に恋をした瞬間だった。


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