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スピカ
【少年/少女 恋愛小説】

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スピカ-1

その少女は星が好きだと語った





「佐渡君?」
「なに…?笛吹…」
「当てられてるよ、前」

そっと、俺に忠告をしてくれるのは隣の席の笛吹(ウスイ)まどか
黒髪のみつ編みで真面目のレッテルをもつ少女
たまたま今回の席替えで隣になった

それまで、笛吹の事はそれほど知らなかった
俺みたいな茶髪にピアスな奴が仲良くできるようなそんな娘じゃなかったからだ

でも、隣の席になってからだった

「笛吹さ…俺が当てられたら教えてくれね?」
「うん、良いよ」

そのとき、たまたま笛吹の笑顔を見てしまったんだ
それから、俺は変になった


何か、変なものに取り付かれたかのように




「笛吹ってさ、何部?」
「私?天文部」
「へー、お前っぽい」
「そう?でもね夏の間は水泳部だったの」
「水泳部…」

「お前、水が似合いそうだよな」
「そうかな…いつも似合わないって言われるんだけどね」
「でもさ、なんで天文部に入ったんだ?」
「おとめ座が見たかったの」
「おとめ座…」
「私、おとめ座だから、見たいなぁって」
「俺は、双子座」
「双子座って二重人格なんだよ?知ってた?」
「じゃぁ、俺にピッタリだ」





「佐渡さ、笛吹に惚れたろ?」
「は?」
「だって、授業中笛吹のほうしか見てないじゃん」
「…そんなことないって」
「だよなー、お前みたいな茶髪に真面目ちゃんは惚れないよな」

あっさりと、俺の恋心は認められなかった
それほど、似合わないって事なのか


「佐渡君、当てられてる」
「んっ…さんきゅ」

黒板に数学式を書いているときだった
黒板の日付がもうすぐ夏だという事を思い出させてくれた

俺の家の近くで毎年やっている夏祭りに笛吹も誘ってみたら笑顔で、
「良いよ」
と、言ってくれたんだ

「笛吹!」



「沢渡君…」
「ゆ…浴衣だったんだ」
「うん、お母さんが着てけって」
「じゃ、行く?」
「うん」

「この空に、おとめ座は無いのか?」
「うん…」
「おとめ座って、明るいのか?」
「スピカって星を目印に見つけるんだけどね」
「スピカか…」


あまりにも、幸せそうに笛吹が笑うから俺は次の日に笛吹が北海道に転校するなんて考えても見なかった


新学期になっても寝ている俺を起こしてくれる人は居なかった

唯一笛吹の友達から聞いた連絡先
手紙を一通だけ出した

返事は貰う気もなかったから住所も書かなかった
突然、笛吹が俺に会いにやって来る…
なんて希望を持ってみたりもしたけど奇跡は起きなかった





笛吹へ、あの日言っていたスピカは見つけられましたか?


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