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嵐が来る前に
【学園物 官能小説】

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嵐が来る前に-9

「その前に先生。絶対に誰にも言わないって誓えますか?」
「どうしても秘密にしなきゃいけない事?」
 いぶかし気な表情で逆に問いかけて来る。
「……どうしても、知られたくない事だから」
 その言葉を口にする為に、二つの拳にキュッと力を込めなきゃならなかった。
 そして僕は、先生の顔をまともに見る事ができず、うなだれる。
 暫くの間、静寂と言う名の重い空気が部屋の中を支配した後、先生は口を開く。
「分かったわ。ホントの理由は皆に黙ってる。
 約束する。
 だから先生に話してくれる?」
「その証拠になるような物、ありますか?」
「先生の事が信用できない?」
「先生だって雇われてる身ですからね」
「君の言う通りよね」
 僕の言葉の意味を理解したのか、先生は溜め息を吐く。
「じゃあ白状するけど、実は君の事、結構好きだったのよね。
 一人の男の子として」
「……………。
 本気ですか!?」
 疑いの眼差しを向ける。
「本人目の前にしてこんな冗談言えるほど、根性曲がってないつもりだけど?」
「……じゃあ、告白文書いて下さい。
 大切に保管させて頂きますから」
 つまりは秘密をバラすと、その手紙を公開すると言っているのだ。
「いいわよ、それくらい。
 て言うか、ちょっとドキドキするかも……」
 そんな事を言いながら、隅に置いてあるコピー機から用紙を一枚抜き出し、僕の目の前で告白文を書いて渡してくる。
「や〜ん、もぉ。
 中学生の頃に戻ったみたい」
「心配しなくても、端から見たら立派に中学生してますよ」
 達筆な文字で書かれた告白文に目を通しながら、僕は呟く。
「う〜っ。
 鳴海くんって、こんなにも性格悪かったのねぇ」
 恨めしそうな目つきで睨んでくる。
「う〜っ、て。犬ですか!?全く……」
 告白文に目を通しながら呟く。
「でも、惚れ直したかもぉ!」
「Mですか、貴女はっ!」
 読み終えた告白文を机の上に置きながら、またもやつい突っ込んでしまった。
 こうしていると、つくづく教師らしくない先生である。
「ま、これでお合いこですね」
 着ていたカッターシャツとインナーシャツを脱ぎ捨て、隠すように胸に沿えた腕を下ろす。
「これが、その理由です」
 先生の視線は、僕の胸元に釘付けになる。
「これ……」
 先生は明らかに男には無いはずの、胸の膨らみを指差す。
「豊胸手術?」
「なわけ無いでしょう!」
 思わず突っ込む。
「しょうが無いですね。
 ホントはここまでするのはヤなんですけど……」
 一つ溜め息を吐き、先生に背中を向けてベルトを緩める。
 すると大きめのスラックスがストンと足元に滑り落ちた。
 次に指をショーツにかけて、一瞬の躊躇いの後にそれを下ろし、そのまま足元から抜き取る。
 今の僕の姿は、校則通りの真っ白な無地のソックスと上履きだけと言う、かなり恥ずかしい姿だった。
 股間を隠すように前で両手を組み、再び先生と正対する。
 そして勇気を総動員して、ゆっくりと組んでいた両腕を離し、後ろ手に組み直す。
 先生の瞳には、僕の全てが映っているはずだった。
 自分から服を脱いでおいてこんな事を言うのも何だけど、今更ながら恥ずかしすぎて先生の方をまともに見れない。
「も、……もう、良いでしょう?」
「そ、そうね。ご免なさい」
 先生は我に返ったと言うように、慌てて視線を外す。
「早く服、着なさい……」
 先生の狼狽えた言葉を最後まで聞く前に、急いで脱ぎ捨てた服を着込む。
 僕が着終わって、椅子に腰かけるのを待ってから、先生は口を開く。
「去年の水泳大会までは、確かに男の子だったわよねぇ?
 水着穿いて出たんだから」
「……胸はともかくあの時にはもう、あっちの方は大分小さくなってましたよ」
 恥ずかしい言葉を口にした事に気付き、僕は俯く。
「確かにそんな身体になってたんじゃ、男の子としては置いておけないわよねぇ」
 ピクッ
「でも、女の子としてなら置いておけるんだけど…?」
 ズキッ!
 先生は一旦、言葉を切る。
「そんな事、出来ないよねぇ」
 俯いたまま、コクリと頷く。
 膝の上で握り締めた拳の上に、熱い雫がポタリと落ちた。


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