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赤い靴
【青春 恋愛小説】

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青い春-1

春が来た。



腕のギプスが抜ける頃にはそんな季節になっていた。



風が気持ちいい。草木が段々色付いていく。





春は私が生まれた日。



再来週は私の誕生日。



私が生まれた3月27日、その日は風が強いよく晴れた日だったそうだ。
父は生まれた私を見て「春風は僕に大きな幸せも運んで来てくれた」と涙したらしい。

その父は今はもういないから、私はそれを父との思い出として大切にしている。





春の爽やかな風を浴びながら学校に行く。



私がそこに行く理由はただ勉強して知識を得ることのみだ。

友人、と呼べる人は2人しかいない。人付き合いがあまり上手ではないため、私はクラスでも部活でも浮いた存在になっている。



校門をくぐると同時に私の気分は憂鬱になる。

「憂鬱だから周りと会話しない」そう思わないと泣けてきてしまう。
本当は「周りと会話できないから憂鬱」が正しいが、自分がみじめな存在だと認めたくない。それが私の小さなプライドだった。



教室へ入り、自分の席に着く。クラス内では数人のグループを作って会話をしている。私はそれを無視する。

きっとこのクラスの人達は誰も私の誕生日なんて知らないんだろうな。

私は小さく溜め息をついた。



部活を終えると外はもう暗かった。3月だといえ夜は流石にまだ冷える。

自販機でココアを買ってひと息つく。今日は1人で帰るから何となく隣が寂しい。



再来週、ねぇ…。



きっと誕生日には家で家族が祝ってくれるだろう。
でも、学校ではどうだろうか。部活ではきっといつも通り必要以上の会話をせずに1日を終えるだろう。
カナちゃん以外、私が生まれたことを祝ってくれる人は、この学校にはいない。

私が生まれたことを喜ぶ人は、いない。



そこまで思って我に返った。さっきまで温かかったココアはぬるくなっていた。


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