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夏の雪
【純愛 恋愛小説】

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夏の雪-2

「ど、どうしたの?」
「富士山登って取ってきたんだ。寒かったぜ、まったく」
「……この、馬鹿ぁ!」
バリン
持った花瓶が床に落ちる。
「な、何をやって……」
驚いた。
彼女は泣いていた。
涙を見られるのは恥ずかしいのか、手のひらで顔を覆いながら。
「どうして、どうしてよっ!」
「どうして……って。頼まれたから」
「頼まれたからって、じゃああたしが死ねって言ったら死ぬのっていうの!」
潤んだ目でキッと、彼女は俺を睨む。
泣きながら怒るとは反則だと思う。
こんな風に怒られてしまったら、男は何て言うかなんて決まってるのだ。
「死ぬよ。あくまで君が俺に死んで欲しいと思うならだけど」
「この大馬鹿!」
今度は涙を滴らせながら、泣き笑い。
忙しいことこの上ない彼女の表情と予想以上の彼女の喜びを見て思う。
もうしばらく嘘をついていよう、と。


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