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「命の尊厳」
【ホラー その他小説】

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「命の尊厳」前編-2

「…!!」


次の瞬間、〈ドンッ!〉という音と共に女の身体は根こそぎ飛ばされ、頭を硬いモノに叩きつけられた。

クルマはわずかなブレーキ音を鳴らして急停止する。ぶつかった勢いでボンネットに乗り上げた女の身体は、ズルリと路面に落ちた。


濡れた路面が赤く染まっていく。


運転手は女の状態を確認せずにしばらく止まっていた。が、やがてクルマをバックさせると、逃げるように現場から走り去って行った。

残された女の身体を雨粒が容赦無く濡らしていく。全ての出来事が雨音によって掻き消されていた。




ー2日後ー


〇〇総合病院。

5階エレベーターを降りると白に囲まれた廊下が左右に続いている。そこを右に進むとナースセンターが在り、その先にある集中治療室に女性が緊急入院していた。

喉元にチューブを繋がれ、様々な管やコードが彼女の周りを囲い、定期的な機械音が室内で鳴り響いている。

その室内に担当医である松浦哲也は看護師2人を従え、彼女の容態をチェックしていた。

「JCS…300…深昏睡。脳波は平坦…」

松浦は白衣に差したペンライトを取り出すと、女の瞼を開いて瞳にライトの光を当てる。

「対光反射無し。瞳孔は…4ミリ近いな…」

ひと通りの所見を行いながら、松浦は容態をカルテに書き込むと、口頭で述べていく。2人看護師は彼の言葉を記録に書き留めた。

処置を終え、治療室から出てきた松浦を2人の男が待っていた。

ひとりは身長175位。いかつい顔立ちに浅黒い肌、がっちりとした体型とグレイのスーツ姿はヤ〇ザを思わせる。
もうひとりは細面に整った顔立ち。スマートな体型に黒のスーツを纏っている。

「松浦先生ですね。2〜3お知らせしたい事がございまして……」

そう言って、いかつい顔立ちの男は内ポケットから手帳を取り出した。


それは警察手帳だった。


「申し遅れました。私、〇〇署、刑事課の桜井で、こっちが高橋です」

松浦は堅い表情で目配せする。
と、看護師達は軽く会釈をして、足早にその場を離れた。


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