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Kaleidoscope kurebaiiyo
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Kalaidoscope Otoutokun-1

自然と目が覚めて、一番最初に目に入るものが、いつものあたしのピンクのベッドカバーじゃなかった。
その代わりに、水色の綿毛布がかかってて、あぁあたしって水色が好きじゃない、と思う。
別に苦労して思い出さなくても、今の状況を理解するのは難しくない。隣に寝ている舜祐と、裸のあたし。

舜祐には6月の終わりに告白されて、嫌いじゃないから付き合った。一緒にいると楽しい。それが舜祐への感情のすべて。
実際、あたしは今まで誰かを本気で好きになったことがない。人の心なんてわからないから、自分のことをどう思ってるか考えるだけでも疲れるし、なにより、男に振り回されている自分、というのを見たくない。
だから告白された人とだけ付き合う。それなら、相手が自分のことを好きなのが分かって、安心できるから。
 でも、昨日の夜は舜祐がいてくれて本当によかった。
隣でもぞっと舜祐が動いて、ふとんから頭を出す。
「……起きてた?」
「今、目が覚めたとこ」
あたしはベッドの中で丸まったTシャツを身につけ、立ち上がる。
「朝ご飯作るよ。何がいい?」
「冷蔵庫に卵があるから、目玉焼きー。俺、自分じゃ作れないし」
引っ越してきてから、みんなの朝ご飯は毎日あたしが作ってる。東京に来る前じゃ考えられない。
他にも付け合わせ、と冷蔵庫の野菜室を開けると、ゴロゴロとじゃがいもが転がってきた。手にとって、ふと聞いてみる。
「……ねぇ、じゃがいもの皮ってむける?」
「え? あぁ、むけないから、親が送ってきても困ってる」
「そう……」
じゃあ、もしあたしと舜祐が結婚したら、うちの食卓にじゃがいも料理が並ぶことは一生ないんだわ。
あたしはじゃがいもの皮がむけない。どう考えても、あんなことをして、指を切らないはずがないと思って、恐くてできない。だからいつも代わりに環がやってくれる。最初は実も削りすぎて小さくなってたけど、今じゃすごくうまい。
 だからあたしは練習しなくていい。環がやってくれるから。
「……弟くん、環くんだっけ?」
環のことを考えていると、それを見透かしたように、舜祐が聞いてきた。
「ずっと俺のこと睨んでたよ。超恐かった。よっぽど姉ちゃん、とられたくなかったんだな。って、高2だよな?」
「う、うん……」
「じゃあ、シスコンって年でもねぇか」
笑う舜祐。あたしは意味が分からなくて、でも、家に帰ってあの子と一緒にいた後の環の顔を見るのは、なぜかとてつもなく嫌だと思った。


家にはその日の夕方に帰った。今日また帰らないと、本当に帰りたくなくなる。なんて、昨日あたしたちの間で何があったわけでもないのに。
でも家に環はいなかった。少しだけほっとする。
「嶺と環は?」
「嶺くんは部活、環くんはデート」
部屋でテレビを見ていた弥玖が答える。
一瞬で気分が陰ってキッチンに行くと、割れたガラスが捨ててあった。

「……ただいま」
夜11時、帰ってきたのは環一人だった。
「おかえりー」
弥玖と嶺はもう部屋に行ってて、リビングには二人だけ。
「あの子は? やっぱ明日学校だから帰った?」
「……あぁ」
「じゃあ、今日ずっと一緒だったんだ。どこ行ってたの?」
「……遊園地」
気まずい雰囲気が一番苦手だからなんとか話題を探したけど、聞いていくうちにどんどん気分が暗くなる。
手持ち無沙汰になって冷蔵庫を開けると、前の日に作ったお菓子があった。


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