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『傾城のごとく』
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『傾城のごとくU』中編-10

「千秋。アンタ変わったね」

彼女は私が予想もしなかった言葉を返してきた。その言葉に対してどう返答すれば良いのか私は困った。

「え〜と、そうかなぁ?」

そう答えながら、自分の顔が火照っていく。

「春頃と比べるとね。……あの頃の千秋はさ、買物行っても自分じゃ決められないような所あったし。それに妙にオドオドしてたし。でも今は違う。なんだか、お母さんみたい!」

今度は耳まで熱くなる。

「そ、そうかなぁ…」


亜紀ちゃんは笑顔で頷いた。

「優しいのは前からなんだけど、なんて言うか…強くなったって言うのか周りへの気遣いが出来るようになったよね」

「そんな事無いよ。私、けっこういい加減だから」

私は両手を横に振る。

「ヤッパリあれじゃない。猫飼いだして変わったよ」

そう言われて嬉しくなった。
チコを飼ったおかげで、自分が成長したと思ってくれる人がいるなんて。

「ヤバイッ!あと10分で予鈴が鳴っちゃう」

喜びに浸っていると、亜紀ちゃんの一言が現実に戻す。私達は慌ただしく学校への道のりを走った。




「ただいま〜」

学校が終わって帰宅。いつもは母の〈おかえり〜〉かチコの〈ニャ〜ン〉で出迎えられるはずなのに今日は無い。

「誰も居ないの〜」

やはり返事が無い。
仕方なく自室へ行こうとした時、母が座敷の方から出てきた。

「な〜にい、お母さん。居るなら…」

母が口の前で指を立てたので、口をつぐむ。母は小さな声で、

「チコが縁側で変な事してるの」

母はそう言って手招きするので、私は物音を立てずに付いて行く。
縁側は、座敷の南側にあり、季節による暑さ寒さを縁側で柔げて座敷を遮断するためにある。

そっと覗くと縁側のガラス戸の前で、チコは座って外を眺めてた。
目を凝らすと、口をモゴモゴと動かしてたり、〈ケケケケケッ!〉と鳴きながら尻尾をゆっくりと左右に振っている。

「何?アレ」

初めて見るチコのしぐさに戸惑いながら母に尋ねた。

「どうやら庭の木にとまっている小鳥を見ているのよ」

そういえば居間に羽虫が入って来た時、チコはオシリを数回振るとすごい勢いでジャンプして、飛び回る羽虫を前足で掴んだ事があったけど。

私はそっと縁側のチコのそばから外を眺めた。たしかに百舌鳥が柊の赤い実を啄んでいる。枝から枝へと渡りながら。


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