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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第22章-7

「おかーさん、夕日がきれいだねぇ!」

「そうだね…」

すぐ後ろを、自転車に乗った親子が走って去っていった。

―羨ましい。

――情け無い。

お母さん、貴方は…迷ったり、後悔しなかった?自分の子供を、戦渦の最中に送り出すことを。それとも、そんなことは、考えもしなかったのかもしれない。

いま、貴方と話すことが出来たら…。

「…寂しい。」

抱えたひざに落ちたしずくは、不思議な温かさを保ったままジーンズに吸い込まれた。

―弱っちいなぁ…私…。

「ちぇ…っ」

こんなに

「こんなに弱虫だったかなぁ…!」



+++++++++++++



飃は、さくらが去った後を少し時間を置いてから追うことにした。彼女に考える時間を与えてやりたくて…そして、自分にも。



「なあ、ツムジって言ったっけ、あんた。」

後ろから聞こえた声に、振り向かずにうなずく。彼の敵意のこもった声には、明らかな理由がある…それをわかっていた。

「おれ、あんたのことを憎むよ。」

それは、宣戦布告とは違った。彼自身、さくらが飃のものであることを悟っているからだろう。飃はなおも、彼の顔を見ずにゆっくりと歩いた。それを追い越すでもなく、後ろからついてくる慶介に、飃は言った。

「構わない。好きなようにしてくれ。」

「おれはな、さくらの代わりにあんたを憎むんだ…あんたと、あいつの両親をさ。でもあいつの親は死んじまったし。あいつの人生は、もっと幸せでよかったはずなのに、それをあんたが来て、滅茶苦茶にしたんだぜ…自覚してるだろうけど。」

足を止めたかった。でも、彼らは歩き続けた。不自然なほどゆっくりとした足取りで。

「あいつは、あんたのことが好きだから、あんたを憎めない。平和な毎日を望むことだってできない。だから、代わりにおれがあんたを憎む。」

飃は、両手をコートの中に突っ込んだまま、静かな声で返した。

「ああ…頼む。」

慶介にも、さくらにも、その権利がある。飃はそれを、甘んじて受け入れるつもりだった。

「そうしてくれ。」

「だからお前は、何にも考えねえであいつを大事にしろよ。あいつに執着してやってくれ…あいつが、自分が死ぬことになるかもしれないとか、考えないようにさ…。」

足が止まった。


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