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甘辛ニーズ
【コメディ その他小説】

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辛殻破片『我が甘辛の讃歌』-2

「凪と言い透と言い聖奈さんと言い…混乱を生む事が尽きないよ、本当に」
「呼んだ?」
 …この純粋無垢な表情が一番の謎と言える。 あの二人から昨夜の出来事、もとい凪の話を聞くことになるだろうけど、あまり良い情報は期待できない気がする。
「…あと一個、このおにぎり…」
「大丈夫大丈夫。 私はいらない」
「わかってたけどさ、せめて最後まで言わせて下さい」

 もう一度、事態を整理しよう。


 養父に首を絞められ、意識が無くなっていたあの時、あの夜から────
 たしか雪さんは「透が佐々見くんを背負っていた」と。
 ────そう、ここまで。

 僕が自宅で気絶してしまったところから…何故か雪柳宅に運ばれてきたところまで。
 情報が足りない空白の間はそこだ。

 何故透が僕を背負っていたのか。
 何故凪は雪柳宅の前で倒れていたのか。
 全体的にどんな事件が発生していたのか。

 あと僕が雪柳宅に運ばれたところから、今日の朝、僕が起き出したところまで。
 雪さんが教えてくれた情報は全て、根本的に大事な部分が欠けていた。 ここも念の為に聞いておこう。

 結局、凪のことばかりだな。





 凪が腹を空かして「もう死にそう…」と嘆いていたところで、それはやってきた。

 肉と野菜が入り交じり、そこから更にスパイスを加えた様な、実に美味そうな匂いがリビング中に立ち込め、何故か凪に異変が起きた。
 髪が金色に逆立ちだした訳でもなく、ただただ唸っている凪。

 …もしかしたら、我々は新たな野生の神髄を見れるのかもしれない。 様子見だ。

「待たせてしまってすみません、やっと出来ました」
 先の制服は覆っていない、いつの間にやら着替えたのだろう。 いつものエプロンを着こなす聖奈さんが手に持つは大きな盆。 そして盆の頂に存ずるものは、正に至高の食物がやれ二つ…!

 と、ここで一端凪に注目してみよう。


 ……………虎。

 獲物を視野に捉え、いつ捕らえようかと今にも走り出しそうなその体勢。

 虎だ。 虎としか言えない。

 って…冷静に考えてみろ。
 このあと聖奈さんは凪に襲われ組んず解れつを繰り返しもみくちゃにされまさか服を脱がされそこに透があいやあっぱれと乱入して良いではないか的な展開が発生して僕は傍観者!?

「凪と透の魔の手が…聖奈さん! 逃げるんだ!」
「逃げ……? なぜそのように、…なっ、凪さん!?」
 遅かった。


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