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dark and the moon
【悲恋 恋愛小説】

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dark and the moon-1

カチッと、携帯を開く音がした。落ち着いた低い声が、小汚い狭い部屋に響く。声の主へと目を向けると、私に背を向ける形で電話をしていた。

 

誰と電話?なんて聞かなくてもわかる。
「起きてたのか」
「うん」
電話を終えて、彼は携帯を背広のポケットへとしまう。
「そろそろ服着た方がいい?」
「いや」
そっとまたベッドにもぐりこんで、私にキスをひとつ。
「今日は大丈夫」
そういって私の額をなでて微笑んだ。
「ありがとう」
「いや」
彼の声が、すごく穏やかでついつい閉まっていた感情があらわれそうになって、私は焦った。
「どうした?」
「…ううん」
「言えよ、寂しいって」
私の上にかぶさる彼は、凄く大きくて、暖かだけど、今の私には酷く冷たく感じる。

 

言えるわけがないのに、そんなこと。

 

だからと言ってこの関係を立ちきれるわけでもなく。
いつまでつづくのかわからないまま、またきっと朝は来て、夜はめぐる。


 

熱に浮かされながら、うっすらと目を開けると、月が雲にかくされていた。

 

 

私は、苦しくなって、彼の熱にしがみつくしかなかった。

 

 

朝が来るのを拒否するかのように、闇におぼれてゆく。

 

 

そうすることしか今の私は出来ないから。


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