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明日になれば…
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明日になれば…-5

橘は苦笑いを浮かべながら、

「イヤ、今、手伝ってくれる人は全部で15人だ」

そして橘は彼女に訊いた。

「君、名前は?」

彼女は躊躇い勝ちに言った。

「……春菜…」

「春菜とはね、2日前に知り合ったの!彼女も家出したんだって」

圭子が割って入る。

「そうか…まあ座ってくれ。そこらのイスに」

2人は橘に促され、イスに腰掛けた。カップに熱いミルクを注ぐと彼女達に渡しすと、自分も机のイスに座った。

「圭子、さっき〈いらない子〉って言われたと言ってたが…訳を教えてくれないか?」

圭子は、湯気の上がるカップを傾けミルクをすすって、なかなか喋べろうとしない。

「なあ、この間も言ったようにオレはオマエに普通の15才をおくって貰いたいんだ」

先程までとは違う、橘の真剣な眼差しに圭子は目線をそらして、ため息を吐くと、重い口を開く。

「……あの日、親に謝って普通の生活に戻ったの。久しぶりの学校でも〈皆と馴染めないかも〉って覚悟したの。
だけど、全くそんな事なくて。センセイに毎晩電話してたじゃない。あの時、とっても楽しかったの。〈やり直せるんじゃないか〉って本気で思えて……」

圭子はそこでひと息吐くと、視線を下に落とした。そして、


「それから、ひと月くらい経った頃、教室で倒れたの…妊娠してて、すぐに堕ろして…誰にも気付かれないように」

橘と春菜は圭子の話を黙って聞いていた。

「ある日、担任から職員室に来るよう呼ばれたの。なんだろうと行ってみると、応接室に校長と教頭と……私の両親が…」

圭子の話では、彼女の妊娠、中絶の事が担任のもとに匿名での投書があった。
担任は当初、全く相手にしなかったらしいが、その後も数回に渡って投書があり、具体的な病院名や堕胎日等が綴ってあった。
さすがの担任も仕方なく調らべてみると、それが事実と確認された。学校は直ちに緊急職員会議を招集し、賛成多数で圭子の退学に至った。
圭子は嗚咽混じりに喋ろうとするが、言葉にならなかった。

「…学校から…ウチに戻ると…お父さん…だけじゃなく…両方から……〈オマエなんか産まなきゃ良かった〉って……」

だが、それだけならガマン出来た。学校がダメでも、働きながら定時制に行けば分かってくれると思っていた。
しかし、圭子にとってガマン出来ない決定的な事が起こった。それは学校を辞めてから1週間後の事だった。
彼女の友人が訪ねて来たのだ。そして彼女は、圭子が親友だと思っていた子が、彼女の妊娠、中絶を学校中に広めた張本人である事を伝えた。
彼女はすぐには信じなかった。すると友人は、携帯を取り出して圭子にメールの受信ホルダーを見せてくれた。
そこには、親友と思っていた子が圭子の妊娠、中絶に触れたメールが載っていた。


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