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嘘嘆
【悲恋 恋愛小説】

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嘘嘆-1

――――雅貴、私と裕子どっちが好きなの?
俺の名は雅貴。祥子からの突然の質問にとまどった。
裕子は3年も前から付き合っている。出会いは同じバイト先で働く仲間だった。
祥子は裕子の双子の妹である。祥子は付き合って1年足らず。顔はそっくりだが、性格は違っていた。
裕子はおとなしくて何一つ不満も言わず、俺にとっては最高の彼女・・・。
祥子は明るくて嫌なことは何のためらいもなく言い放つ彼女。
3人はお互いの関係を認めている。その訳は・・・もう裕子はこの世にいない。1年前に病気で亡くなった・・いや正確に言うと病院で亡くなったと言う方が正解かもしれない。
祥子の体は生まれつき心臓病が悪く毎日が発作との背中合わせの生活だった。3年前から特にひどくなり入退院を繰り返す日々だった。
精神的に参っていた祥子は病院の屋上から飛び降り自殺を試みた・・・
運良く助かったが心臓に負担をかけたため脈は相当弱っていた。意識も戻らずいつ心配機能が停止してもおかしくない状況だった。祥子たちの親が出した決断は心臓移植だった。
だが移植手術をするにはかなり難しく移植した側の人間の命を落としかねない。
俺ももちろん祥子の体のことは裕子から聞いていた。裕子は俺に自分の心臓を祥子に移植することを告白した。あの日のことは鮮明に覚えている。
ちょうど1年前のある日、電話で「雅貴、私ね祥子に心臓移植して助けたいの。祥子が私達みたいに体のこと気にせず生きてほしいの。いいでしょ?」
あの言葉・・・もう戻れない。俺は「移植って大丈夫なのかよ?成功するのか?手術自体は難しくないのか?手術するならいつ?」――――俺はこの言葉を発する前に戻りたい。
彼女は「絶対助かるよ。成功したら祥子だって健康な体になるわけだし普通に生活できる喜びを味わってほしいから。手術は1ヶ月以内だと思うしまた連絡するね。」少し涙の含んだ声だった。
その涙は希望の涙だと思ってしまった俺は馬鹿だった。それが裕子との最後の会話だった。
祥子に対する移植は奇跡的に成功した・・・だが3日後裕子が逝ったことを向こうの親から聞いた。俺はしばらくの間のことは覚えていない。
ただ祥子の胸で裕子は生き続けていると信じてる・・・俺は裕子が大好きだ。今までも・・・そしてこれからも・・・。
冒頭の質問に俺の答えは見つからない―――。


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