投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

明日への扉
【その他 恋愛小説】

明日への扉の最初へ 明日への扉 7 明日への扉 9 明日への扉の最後へ

明日への扉-8

ー昼休みー

教室内に幾つかのカタマリができ、笑い声や奇声が挙がる。
真希はいつもの輪の中で弁当を展げていた。

すると、

「マキぃ。朝、古河と何か話してたよね」

そう言って、訊いて来たのは律子だった。真希は慌てて口にしたモノを飲み込むと、

「…別に…朝の挨拶しただけだよ…」

俯いて答える真希に対して、律子は茶化すように、

「そんな訳無いでしょう。笑顔で話してた上、本まで受け取ってたじゃない」

すると、周りから奇声が挙がった。〈マキって古河が好みなの?〉〈本って何?プレゼント〉〈ひょっとして、付き合ってるの?〉

などと、真希は質問責めに遭った。だが、彼女は黙ったまま何も答えない。
チラリと義之に目を向けるが、聞こえてるハズなのにまったく無視している。

律子は執拗に真希に訊く。

「私達、友達じゃない。教えなさいよォ」

(…友達……?)

真希は、俯いた顔を上げると、まじまじと律子の顔を見つめる。

(…アナタと私が友達?)

「…どうしたの?」

真希の目にたじろぎの表情を見せた律子が、思わず口にしたた言葉を耳にすると、

「…本当に何でもないの」

そう言って、真希は薄く笑った。

律子は、さも残念そうな顔をすると、

「そう…じゃあいいわ。言い難いんだったら無理に聞かない……」

教室に静寂が広がる。気まずい雰囲気の中、真希は周りに囲まれながらも、ひとり孤独な昼食を摂るのだった。





ー夜ー

夕食と入浴を早々に済ませた真希は、机に置いたカバンから本を取り出した。

〈銀河鉄〇の夜〉

義之に借りた本。部屋の明かりを消すと、ベッドのナイトランプをつける。

枕元で読み進めていく真希。

友達のジョバ〇ニとカムパネ〇ラ。午后の授業で先生に天の川について質問されるが、答えられないジョバ〇ニをかばうように、自分も答えないカムパネ〇ラ。
病弱な母や、漁に出たまま帰ってこない父に替わって働くジョバ〇ニ。対して何不自由無く育ったカムパネ〇ラ。
ケンタウリ祭りの最中、ひとり天気輪の柱の丘で孤独を噛みしめるジョバ〇ニ。

真希は、読んで行くうちに心が、ジョバ〇ニに傾注していった。

突然現れる銀河ステーション。そこに停車する機関車にジョバ〇ニが乗り込むと、すでにカムパネ〇ラも乗っていた……

真希は、いつしか眠っていた。その瞳はわずかに濡れていた。


明日への扉の最初へ 明日への扉 7 明日への扉 9 明日への扉の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前