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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第21章(前編)-6

「青嵐をかばいだてするのですね、飃?」

「頭首殿が青嵐をお疑いになるからには、証拠がなくては。」

南風が業を煮やしたかのように立ち上がった。

「証拠!」

飃は、臆することもなくその姿を目で追った。

「青嵐がどれだけ御くびを憎んでいるか!それで十分でしょう!」

「そうでしょうか?」

飃の言葉に、南風は眉をひそめた。飃の思考能力に問題があることをその目でわからせようとするかのように。

「私をくび守に任命したのは先代でした。彼は立派な青嵐でしたが…残念ながらその血は薄まってしまったようです。今の青嵐と来たら、女垂らしで、怠惰で…たまに協議に出てもまともなことなど何一つしないのですから。」

とにかく、と彼女は振り返った。

「青嵐の元に案内していただきます。先も申し上げたとおり、御くびはここのところ体調が優れない。それに、大きな戦いが迫りつつある。こんな時にあのお方を失うわけには参りません。」

飃は、焦りを隠しきれない様子の南風をしばらく眺めてから、ため息をついた。

「…では明日の、同じ時間にここへ。己が案内します。」

そうか、と、南風の顔が少しだけ明るくなった。

「では。」

そう言って振り返らずに部屋を後にした彼女は、ドアが閉まる前にはマンションの建物をあとにしていた。そして飃は、彼女が部屋から消えたことにまだ気付いていないかのように、俯いたまま考え事にふけっていた。

「大丈夫?」

洗面所から持ってきたタオルを頭にかぶせると、彼はようやく顔を上げた。

「乾いてしまったな。」

そうして、少し困ったように笑った。



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鼻の聞く狗族の中でも、風炎が特に探屋として成功したのには、理由があった。彼の使う“分け身の術”…その分け身を同時に、何体も広範囲に散らすことによって、探し物を短時間で見つけ出すことが出来るのだ。

最初は、カラスのような小型の、そして機動力の高い動物を模した分け身を飛ばす。その数ざっと百。手がかりとなるような臭いを見つけたら、分け身の数を半分に減らして、臭いをたどるのに効率の良い鼠や猫の分け身を使う。いよいよその臭いの道筋を特定したら、その場所に合わせた分け身を使って場所を特定する。茜が風炎の仕事に関わることは稀だったけれど、それでも彼の捜査が滞ったり、未解決に終わったような記憶はなかった。

「―居た。」

風炎が分け身を飛ばし始めたのが3時間前だから、場所を特定するのにかなり時間が掛かったほうだ。何だかドアの向こうで聞き耳を立てるのもあほらしくなってきたので、茜は今やリビングに居た。夕飯を作るというのを口実に、実際にはお茶を淹れただけでほとんど何もしていなかった。

風炎の額には汗が浮かんでいて、過酷な捜査であったことが伺えた。


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