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甘辛ニーズ
【コメディ その他小説】

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辛殻破片『仄暗い甘辛の底から』-1

「今日だけは来てもらいたかったんだがなぁ…まあいいか。 ありがとな、雪柳」
「いえいえ、当然のことをしたまでですから。 あーでも、そうだな、テストの答案用紙を頂けたら嬉しかったり…」
「ほらほら十五分後にプリントを配るから、気持ちを切り替えろ」
「ちぇっ…わかりましたよ」


 実力テストとか、何の為にやるのか未だに理解できん。

 しかし…こんな地獄の日だってのに、朝から騒がしいクラスだ。
 『落ち着く』という行為を知らんのかね、こいつらは。

 おいそこの山田、黒板に醜い落書きを曝すんじゃない。 チョークの無駄遣い、更に時間の無駄遣いだ、自主勉強でもしてろ。

 おいそこの田中、消しゴムを削ってなんだかよくわからないシロモノを生産するんじゃない。 いや…犬か? 結構上手いな。 じゃなくて、資源の無駄遣いだ、自然を大切にしやがれ。

「ったく…はぁ…」
 あまりにも呆れすぎて、思わず溜息をつく。

 いつもと変わらない風景だが、俺には変わって見える、変わって見えてしまう理由がある。



 将太は死にかけだった上に、あの馬鹿は意味不明な言葉を叫んで気絶。
 前者は事情を知っていたからいい。 後者は別だ。

 ふざけやがって、俺は神じゃないんだぞ。

 秀麻 凪(しゅうま なぎ)
 ただただ口うるさくて喧しいだけの女。 一時は可愛い時期もあったのに、百八十度ひっくり返って性格変異。
 その上、将太にぞっこんで一方的な愛情を押しつけてる過保護女。 聖奈さんでも由紀奈でもいい、一般の女性を見習えっつーの。

 そんな女が昨日の夜、俺の家の前で叫喚して気絶して、たぶん今も、" 俺の家で眠り続けている "。
 先生には休みだと伝えておいてやったが、いい迷惑だ。

 俺はテストを受けるのに、あいつはテストを受けない。 これこそ言語道断、理不尽だろうが!
 将太や聖奈さんや天の神が許しても、俺は断じて許さんぞ!

 俺が帰宅したら一つや二つや四十方牌、ご奉仕をしてもらわにゃいかんな。
 いや待てよ、今の内に内容を決めておくか。
 最初に俺を「ご主人様」と呼ばせて裸にエプロンをしてもらい、「体が熱くなってきちゃいました…」と言わせて俺がエプロンをひん剥いてやり、そうしてそれから大いなる欲望の赴くがままに調教を
「あの…」
「…あ?」

 ふと見ると前の席の石田という女が、紙を数枚手に持って俺を見つめている。
 そうかそうか、持っている紙を離してはいけないと思いつつも、俺を抱きしめたくてうずうずしているのか。 ならば久々にこの言葉を口にしてやろう。

「俺様の美」
「プリントです…後ろに回して下さい…」
 …なに?

 もう時間なのか。 俺がちょっと計画を練っていたところで、簡単に時が進むとは。


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