投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

飃(つむじ)の啼く……の最初へ 飃(つむじ)の啼く…… 336 飃(つむじ)の啼く…… 338 飃(つむじ)の啼く……の最後へ

Need/-ed-11

「それなのに…君に興味を持ってしまった。もっと知りたいと思った…。そんな資格は、この僕にあるはずもないのに。」

あたしは、風炎の腕から抜け出した。

「そうね。」

彼の言葉はそこで途切れ、あたしは振り向かずに言った。

「じゃあ、死んで贖(あがな)うよりもっと簡単なことをしてもらうわ。」

振り返ると、風炎の目とあった。彼の美しい金の髪よりも、もっと深くて濃い、濃金の瞳。

「一生あたしのそばに居て。」

そして、背伸びして彼に口付けた。

「一生、あたしの名前を呼んで。あたしが呼んだらかならず答えて。」

「そんなことで、いいのか?」

あたしは答えた。

「そんなことが、いいの。」



―それが、ずっとあたしが欲しかったもの。

そして、あたしがあげられるもの。





死より他に二人を分かつものはなく、

愛より他に二人を繋ぐものは無し。

生ける間はその手を以て樹を育み

死した後はその身体を以て土を育まん

悪しきを正し、正しきを貫かん

苦楽を分かち、共に歩まん

己(おの)が血の為 己が血を継ぐ子の為に

この祝詞(のりと)を以て 我ら夫婦の誓約を成す。



朝の光の中で、初めて聞く風炎の歌声は美しかった。聞いた事の無い言葉は、ずっと一緒にいた彼の知らない部分を露にした。それでも、不安は感じなかった。不安を感じさせないほど、その歌は優しく、慈愛に満ちていた。

聞きほれるあたしを見て、微笑んだ顔に、不意に恥ずかしさがこみ上げる。逃げたいような…ちょっと待って欲しいような…そんな中途半端なあたしの頭に手が触れる。今まで意識したことも無かった、華奢で、綺麗な手。その手が冷たくて、自分がどれだけ熱いのか、思い知らされた。

「怖い?」

うなずく。嘘はつけなかった。あたしの何かが暴かれるような予感がして…同時に、あたしが知らない風炎を見せつけられるような気がした。触れた事の無い、風炎の唇が、躊躇いがちに額に落ちた。横になるあたしの上に屈みこむその体…そう、当たり前のことだけど、彼は男で…当然男らしい体つきをしていて、そして力強い。意識して、触れてみたくなる。硬い首筋にそっと触れると、何故かそれだけで安心した。

目を閉じて…風炎のキスを受け止めた時…あたしは生まれて初めて、安堵の涙を流した。

「泣かないでほしい、茜…どうしたらいいかわからなくなる。」

抱きしめる風炎の声は、聞くたびに新しい感情を持つ。多色刷りの版画が、完成していくのを見るように。すこしうろたえる彼が面白くて、愛おしくて、今度は笑ってしまう。その目元からこぼれた涙を、風炎の舌がさらった。あたしの顔を見て、風炎が言う。


飃(つむじ)の啼く……の最初へ 飃(つむじ)の啼く…… 336 飃(つむじ)の啼く…… 338 飃(つむじ)の啼く……の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前