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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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Dawn-10

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あの人間の娘が16歳の誕生日を迎えるのが、明後日に迫ったある日だった。

村をおびただしい数の澱みどもが襲った。

切っても切っても、一向に数が減る様子が無い。一昼夜に及ぶ戦いを経ても、まだかなりの数が村に残っていた。

イナサは、住むものの居なくなった家の中で、息を潜めながら負傷した目に応急処置を施している。

「埒が明かん…。」

食いしばった歯の隙間から、飃が漏らす。家の戸の隙間から、村を我が物顔で徘徊する澱みを睨みつけていた。

焦っている。

早く人間の女の所に向かいたいはずだ。何故かはわからないが、飃は、まだ出会っていないその女と自分の間に、不思議なつながりがあると思っているようだったから。

「―行け。飃。お前の身体の中にあるものは、こんなことで失われていいものではない。」

ごく低い声で発したイナサの声に、外を見たまま飃が答える。

「…いけるはずが無いだろう。」

「女の事で頭がいっぱいのでくの坊に居座られても迷惑だ、と言っているんだ。それともそんなに私が頼りないか?」

出来るだけ悪意をこめて言う。

―行ってしまえ。

お前などさっさと人間に手なずけられてしまえばいい。

「お前は?」

少し俯いて、飃が聞く。イナサは、それを無視して立ち上がると、両の腕に刀を携えて、飃の立っている戸の反対側の壁に突進し、脆くなった家の壁をぶち破った。

自分の名を呼ぶ、彼の声が聞こえたかもしれない。でも、イナサは聞く耳を持っていなかった。

「狗族の生を吸う蛆虫共!来るがいい!私はここだ!!」



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「私は、ここだ…!」

上空を旋回する巨大な影が、急降下してくるのがわかった。イナサにも、そして大和にも。

「馬鹿野郎、あいつ…!」

死ぬつもりだ!

空気をかき混ぜながら降りてくる巨大な澱みが、木々を揺らし、埃を巻き上げた。爆発のように襲ってくる暴風から、腕で目をかばう一瞬前、女が微笑んでいるのが見えた。

「馬鹿野郎――っ!!」



澱みが近づいただけで、指の先まで震えるほどの悪寒が身体を支配する。

「さあ、来い!」

あの人間が逃げ回って時間を稼いでくれたお陰で、なんとか最後の一撃をお見舞いできるだけの力は戻った。震える身体を叱りつけ、四肢にぐっと力をこめる。失われた腕が、まだそこにあるかのような幻を感じ…


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