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脱衣麻雀殺人事件
【その他 官能小説】

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脱衣麻雀殺人事件(事件編)-2

 彼らはこの麻雀で、当然のように賭けもしていた。だが、賭けるものはお金ではなく、衣服である。負けるたびに、着ているものを一枚ずつ脱いでいくのだ。俗に言う脱衣麻雀である(ただし龍之介と空太はそのかわりに金を賭けていた。男が脱いでも楽しくないと言う意見で一致したからだ)。
 ナナは現在、通算四敗している。上着を脱ぎ、靴下を脱ぎ、シャツを脱ぎ、ベルトを外している。残るはキャミソールとミニスカートだ。どちらを選んでも下着姿。究極の選択。
 「ううう……」
 なんとか脱がなくていい方法を探したが、思い付かない。
 「わたしのあげたヤツを取るのはダメだよー」
 一つ思い付きはしたが、それは千穂子に先に釘を刺されていた。
 酔ったノリで脱衣麻雀なんかに賛成してしまったことを悔やむが、もう遅い。観念して、キャミソールの肩紐に手をかける。
 「おっ。上からか」
 空太がからかうような口調で言った。
 「あ、あんまり見るな!」
 などと言ってもそれは無理な相談である。結局ナナは顔を真っ赤にしながら、豊満なパストを包むブラジャーを空太たちの前で晒す羽目になった。
 (恥ずかしい……!)
 「やっぱりおっきいねー。ナナのおっぱい。うらやましいなー」
 呑気な感想を漏らす千穂子。それよりも、ナナは男達の視線が気になる。
 「は、早くもっかいやろ! もっかい!」
その空気に堪えられなくなって、ナナは空元気でみんなを促した。自分のかっこうのことは極力忘れようという作戦だ。
 「へいへい。じゃやりますか。ナナの下のも脱がさせるために」
 龍之介がいやらしく言った。それだけでほおがカッと熱くなる。
 (とにかくもう負けらんない!)
 ミニスカートまで脱がされて完全な下着姿にされるのだけは勘弁してほしかった。ナナはもう、脱げるものはスカートか下着しかない。アクセサリーの類もないのだ。
 「よし。じゃ、やるぞ」
 と、四人は牌を混ぜ始めたのだが、そのとき。
 バチン、と音がして、突然電灯が消えた。
 「え! なに!?」
 「え!? え!?」
 暗闇の中でナナと千穂子が叫ぶ。
 「停電……みたいだな」
 冷静に呟いたのは龍之介だ。
 「あっ! そういや今日の12時から点検のために停電するって、一階の掲示板に貼ってあったわ!」
 と今更言い出したのは空太である。
 「なにそれ! もっと早く言ってよ」
 「わりぃ、忘れてた。まあ10分くらいで戻るらしいから、ちょっと待ってようぜ」
 「んもー……」
 それで四人は、カーテンが閉まっているために月明かりもない、本当の暗闇の中で電気の復興を待つことにしたのだが――
 そのとき。
 「ぐああっ!」
 という悲鳴があがるのを聞いて、全員が立ち上がった。
 「な、なんだ今の声!」
 「だれだ!? どうした!?」
 「え!? みんなどこー? なにー?」
 突然のことに慌てふためく四人――いや、三人。
 パニックになった状況の中、パッと電気が点いた。
そして――
 一瞬、妙な間が空いた。だがそのすぐ後に、千穂子が口を開く。
 「ナ……ナ……?」
 千穂子と、龍之介と、空太の三人は、麻雀牌が散乱した机の上に、ちょうど両腕を前へ伸ばす格好で倒れている、下着姿の女性を目にした。
 恐らくさきほどの悲鳴の主であろうその女性――田和津ナナ。彼女は、起き上がらない。
 このマンションに来る前四人は、いつもそうするようにコンビニエンスストアに寄って、酒だのつまみだのを買いあさって来ていた。そのときにだれかがカステラをカゴにいれて、しかもそれは切り分けられていないヤツだったので、マンションについたとき、空太が果物ナイフを出してきて切り分けた。そしてそのナイフはそのまま床に置きっぱなしで……。
 そのナイフが、田和津ナナのうなじに、突き刺さっていた。
 そして、田和津ナナは、すでに――
 絶命していた。


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