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ベルガルド
【ファンタジー その他小説】

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ベルガルド〜横転〜-2

「突っ立ってないで、やることやれ。ノロマ。」

こいつは、ほんとに…私の神経を逆撫でする天才じゃないか…?

「あんた、やっぱり生意気ね。」
私は一言言い残し、セシルを連れて関所を管理する役人の元へ歩いて行った。

ここには魔族を感知するためのゲートは存在しないようで、ただ、古い門がぴったりと閉じられているだけ。そして、その前に役人が二人立っている。

「アーレン国女王の命で参った勅使です。貴国を視察させていただきたいのですが、よろしいですか?」

私は静かにそう尋ねた。
セシルが首を傾げる。
自身が女王であると言うより、女王の使者であるとした方が、結果的には良いとの判断だ。
もし身分を明かしたら、接待などに時間を取られ、身動きできなくなるだろうと思う。

役人はいきなりの訪問に少し慌てたようだ。

「気を遣う必要はありません。ただ、ある事件の重要参考人がこちらにいると伺って、探しに来ただけなのですから。」

「そうでしたか…どうぞお通りください!ただ、上の方に連絡はいれさせていただきますので。」

私は先ほど馬車で書いたばかりの勅書を役人に渡し、本当の勅使であると証明した後、門を開いてもらった。

「行きましょう。」

私たちは再度馬車に乗り込み、その門を通過した。
馬車の手綱を握っているのはベルガルドで、カイが車内にいる。寝ずに馬車を操縦していたためか瞼が重たそうだ。

「これからベルガルドの弟をどうやって探そうかしら?」
私の質問にカイが唸って考える。

「とりあえず、投函された場所がサンドールっていう小さな村みたいだから、地道な聞き込みかな。ラルフは目立つから、たぶん誰かが覚えていると思うし…」

(目立つ…?弟も派手なの…?)

この発言をセシルも疑問に思ったようだ。
「ベルちゃんと弟くんって、似てるの?」

「…う〜ん、似てる…けど、正反対かも。会えば…わかる、と思う…」

カイは矛盾した発言を残したまま、堪え切れないように、深い眠りの中へと入っていった。
弟のことは気になるが、私たちは彼を眠らせておく。セシルがカイに毛布をかけてあげていた。
「な〜んか、憎めない。カイ様もベルちゃんも…。魔族なのに。」
カイを見るセシルの目は優しかった。
その穏やかな顔もつかの間で、すぐに元気な笑顔に戻る。

「な〜んて。でもベルちゃんはちょっとワンパクかな!ね、トゥーラ様!」

私はただ微笑んだ。

いつも明るい護衛団長のセシル。
彼女は元々アーレンの出身ではなく、遠方の古い民族の出だと聞いている。
どのような経緯でアーレン国の役人になろうと思ったのか、私は知らない。
付き人のことを知らないのはおかしな話かもしれない。
もちろん、私が聞けば彼女は答えるだろう。
だけど。
セシルが自分のことを話す時、とても寂しそうに笑うのを知っているから、これ以上追究しようとするのは私のエゴだと思った。


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