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甘辛ニーズ
【コメディ その他小説】

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甘辛ウィルス-2

 事の概要だけ説明しましょう。

 常にエプロン姿で笑顔を振りまく雪柳家の天使、もとい家政婦こと、私の横で泣いている人。
 宮藤 聖奈(みやふじ せいな)、またの名を宮藤・セイナ…アッヒェンバッハ…? という美しいハーフの女性から『ティータイム』と称する『アニメ鑑賞会』のお誘いを頂きまして。
 「是非凪さんにはヲトメの優雅さ上品さ愛らしさを理解して頂きたいのです!」と目を輝かせて訴えかけてきましたので、断ろうにも断れない状態で。

 実はショウちゃんと雪柳透も参加するはずだったのですが、二人とも急に用事が出来てしまったらしく、こんな有様です。

 結局一緒に『セキトリマン 第三十二張・散る花枯れる花、そして真新しく光る花』を見て感動させてもらったのですが…。

 いやはやなんとも言えない状態であります。

 ちなみにセキトリマンとはですね、昔に流行っていた特撮のアニメ…と、聞かされております。
 話に聞くだけで、内容はあまり存じません。


「…あら、もう夕方…え、えと…。 お見苦しいところを曝してしまい、まことに申し訳ありませんでした…」
「き、気にしてないです。 大丈夫です」
「そう言ってくださると恐縮ながらに幸いです」
 目元に残る涙の跡を拭きながらそう言った。

 …いつかの豹変した聖奈さんは、アニメのキャラクターの影響だったんですか?

 それはさておき。
 あの二人…また接触してるんじゃあないでしょうね。







 約束の前日、昨夜のことだ。 急にある人から連絡がきた。
 それは久々に聞く声だった。 別に聞きたくもなかったけど。

「はい、佐々見です」
「……ショウか? わたしだ」

 冗談じゃなく、本当に聞きたくなかった。 虫酸が走るようで、嫌悪感を抱かせる声。
 すぐさま切ろうとしたが
「大事な話なんだ」
 この一言で受話器を耳に当て直した。

 受話器の先を飛んで行き、殺してやりたかった。

「…なんだよ」
「……」
 固唾を飲む音が聞こえた。
「…変わったな」
 人は変わらなくちゃいけない、当たり前のことだ。 それなのに…。

「今更何の用だと言っているんだよ!!」
 定めし近所迷惑だった。 でも声を張り上げられずにはいられなかった。
「傷という傷だけを残していき、底まで落ちてしまった僕を突き放したあなたは…今でも最低の人物だ」
「…………」
「…僕はもう、あなたの息子なんかじゃないんです。 …用件があるなら早く言って下さい」

 吐き捨てる様に言い終えた途端、どういうわけか凪の顔が脳裏に浮かんだ。
 こんな姿は見られたくないな。 見られたら、たぶん嫌われる。


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