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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第17章-3

「最近巷で話題になっている『探屋』の噂を検証します!『探屋』とは東京近郊で噂になっている都市伝説で、最近ではこの噂に関連していると思われる失踪事件も…」

いらいらして、床から立ち上がってチャンネルを回す。「…殺人の容疑をかけられ、賞金つきで手配されていた南 庄蔵容疑者の身柄が、何者かによってみかど警察署に引き渡されました。警察側は、犯人逮捕協力者のプライバシー保護のために、詳しい情報の公開は控…」「臣人の安部投手が、7回裏の登板で右ひじを傷めて病院に運ばれました、医師の診断によ…」「今夜は、食べ放題で大満足できる有名ホテルのレストランをご紹介します90分食べ放題でなんと…」

ああ、もう!ニュースで流すなら、もっと大事なことがあるはずなのに!たとえば、何千年も人間と共に在った妖怪たちや神々が、人間の生み出したバケモノのせいで滅びかけているとか!そんなことを思いながら、あるチャンネルで手が止まった。またさっきの『探屋』検証番組だ。

「面白いことに、探屋は金色の目をしているという目撃情報が非常に多く寄せられているそうです…コメンテーターの…」

耳を疑いたくなる。金色の目って、まさか…でも、金色の目なんてそうあるものじゃないし…それに、探屋の噂が立ち始めたのは、最近になって飃が「仕事」で家を空けるようになった…後。



くだらない…妄想だ…そう考えようとする脳みそと反比例して、心臓は不吉に鳴っていた。

まさか…飃が仮に「探屋」だったとしても、人をさらうなんてことをするはずがない。



……ないよね?



そして更なる事件が起こったのは、「探屋疑惑」が持ち上がってから数日が過ぎた、ある日のことだった。悩み事というものは、一つでも手一杯なときに限って二つ、三つと現れるものなのだ。最近の私が、まさにそう。





「茜っ!?」



部活の最中に、茜が倒れた。よくある少女漫画のように、額に手を当てて「ふらっ」と倒れてくれれば、運はよかったかもしれない。彼女は、まるでその場で魂を抜かれたかのように、ガクッとひざを折って顔面から床に倒れこんだ。私の体中の血液が流れることを拒否したような感覚に陥る。

あわてて駆け寄り、身体をこちらに向ける。息はしているから、少なくとも魂を抜かれたわけではない…実際に、私の周りにはそうしかねない敵が居る。いや、居てもおかしくないというべきか。茜が言葉を発したとき、再び流れ出すと思った私の血液は、さらに凍りついた。

「さ…わんないでよ……。」

自分の耳が信用できなくなったのは初めてだ。自分の耳を疑いたかった。本気で。

「え…?」

自分でも、どれくらい間抜けな表情をしていたかわかる。魂を抜かれたのはこっちだった。

「触るなって言ってんのよ…こんなのなんでもないんだから…!」

そういうと、呆然と見守る部員たちを無視して、茜は勝手に帰ってしまった。


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