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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第17章-2

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「ほんとなんだって!!」

…またあの噂話。失せ物探しの都市伝説だ。

「パパが無くした重要な書類を一晩で見つけてきたんだよ!アレは噂なんかじゃないって!」

クラスメイトの一人が、最近話題の「探屋(さがしや)」を実際に見たとかで、クラスの話題は朝からそれで持ちきりなのだ。

存在しない住所に手紙を書く。宛名にはただ一言「失せもの探し」。すると、こちらの住所を書かなくても探屋が尋ねてきて、なくしたものを一晩で見つけてくる。報酬は、仕事の内容による。探し物を見つけた代わりに魂を奪われるなんてものもある…らしい。

実際に東京近郊では行方不明者が続出し、彼らは行方不明になる前に探屋と接触したという証拠もあるようだ。ここ最近ニュースでも(うんざりするほど)取り上げられているけど…

噂話だろうが本当だろうが、なんとも胡散臭い話だ。そのうち、誰かが下水道で白いワニを見たとか言い出しそう。まだ、妖怪の生気を吸うヘドロの方が現実味があるように思える。

噂話の証人を中心に騒がしい教室。私だって昔はそういう噂にわくわくどきどきしたものだけど…最近相手にしてる化け物と比べると…些細なことのように思えてしまう。自分でも可愛くないと思うけどさ…





「ただいまー…」

誰もいない。それがわかるのは、電気が消えているからでも、返事がないからではない。空気が…どことなく、空虚で、冷たく感じるから…それでも、「ただいま」と言わなければ帰ってきた気がしない。かばんをソファに放り投げ、マフラーを解いて放り投げ、コートを…とにかく全てを放り投げて、仕草まで投げやりにベッドに倒れこんだ。

何よ…飃一人いないだけで、何でこんなにテンション下がってるんだろ。今までずっと一人でやってきたじゃない…。



男が生きていくには、仕事が必要だと、昔誰かが言ったのを聴いた記憶がある。確かにそうなのだろう。妻の実家から送られてくる生活費にご飯を食べさせてもらうというのは、たとえプライドの高い狗族という種族でなくても、男なら避けたい状況だ。理解できる・・・頭では。

でも心では…仕事なんてどうでもいいから、早く帰ってきて欲しかった。得体の知れない「裏家業」なんて切り上げて、早く帰ってきて、一緒に暖かい部屋の中で、ご飯を食べて、寄り添って…

きりのないわがままに終止符を打って、寝返りを打つ。あぁ・・・身体まで重い気がする。飃がいないと、地球の重力が10%くらい増すんじゃないかと思う。もちろん、実際にそんなことになったら大問題だけど。

ベッドの上で転がりながら制服を着替え、さらに転がって…ベッドの淵からドスンと落ちた。

「あぁー…。」

駄目だ…元気でない…

つけっぱなしのテレビが、向こうのほうで夕方のニュースを垂れ流している。


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