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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第16章-6

部屋に戻るのが恐くて、震えながらその場にしゃがんだ。胃液に焼かれてしゃがれた声で聞く。
「あなたは?ここで何を?警察?」
ちぐはぐな質問に、男は笑った。
「俺は飆(ワール)。よく見ろ、俺は狗族で…」
重い足音が近付いて来る。正確には靴音だ。家の中で靴を脱がないなんて…
「イギリスの人狼とのハーフなんだな。」
彼は私の前にしゃがんだ。
「その人を…しってるの?」
彼は笑った。
「残念ながら。」


「俺のほうがあんたより多くを知っているようだ。」
遺体のあるアパートからさほど遠くない喫茶店で、私達は話をした。
「多く…ですか。」
「ああ。俺は偶然あの場所にいた訳じゃない。訪ねて来たんだ…あの娘を。」
意味ありげな休符を挟んで、飆が言う。一瞬、窓の外の灰色の景色を見て黙り込んでから、唐突に言った。
「ところで、飃の奴は元気か?相変わらず堅物か?」
「あ、ええ…堅物ですね…。」
この人は一体何者なんだろう?私の沈黙を汲み取って、飆が話を続けた。
「あいつとはじめて会ったのは…2、3年前かな…ほら、どっちがどっちを取るか決めなきゃならなかったから。」
「どっちがどっちを…?」
飆は、一瞬私が彼の知らない言語で話しかけたかのように固った。
「聞いて無いのか?」
私は溜め息をついて椅子にもたれた。
「堅物ですから。口も堅いんです。」
私の冗談にふっと笑って、彼は教えてくれた。それは、私の中で欠けていた、過去と言う名のパズルの…一ピースだった。


「…俺たちに呪いをかけた俺たちの親、つまり、狗族の方の親って事だが…ある集団に属していた。」
「ある…集団…?」
「青嵐会と言う。聞いた事は?」
記憶を一巡りしてみてから、私は首を振った。
「とにかく、その青嵐会ってやつは、狗族が組んだ自警団みたいなもんでな…まぁ俺にも詳しいことは分らん。とにかく謎が多い組織だ。」
飆は一度言葉を切って辺りを見回した。
「奴等は、俺たちの片親となる4人を選び…来る対澱み戦の戦力とするべく、結婚相手を選ばせ、呪いをかけさせた。」
私は手をあげた。
「ちょっとまって…4人?」
絡まった思考の糸と格闘しながら聞いた。
「だって…呪いを受けたのは飃と私の2人のはず…」
「誰に聞いた?」
私は口ごもった。
「え、あ…誰にも…。」
「まぁ、お互いの事はあまり知らされなかったからな…だが、あの時は見物だったんだぜ…嫁候補者の写真を見るなり飃のやつ血相変えて…俺は仕方無く余ったほうの女を嫁に…」
立ち上がりたくなるのを必死で堪える。
「ちょ…じゃ…あなた…も…?」
彼は頬をガリガリと掻いた。
「飃のお袋の雪解、あんたの父親の鷹風、俺のお袋と、さっき遺体があった美桜のお袋…みんな青嵐会に所属する狗族だ。いや、していた。だな。」



喫茶店のドアがバーンと開き、もっと穏やかに鳴ることを想定して作られたドアベルがけたたましい音を立てた。


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