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『ヘリクツ』
【レイプ 官能小説】

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『ヘリクツ』-1

「どうしてみんなと仲良くできないのかな」
なんて今さら、分かりきったような綺麗事を言ってくる教師を、俺は睨むようにじっと見つめた。ずっとそうしていると教師は、何か後ろめたいことがあるかのように、すっと俺から視線を逸らすのだ。俺はバレない程度に軽く鼻で笑った。
所詮はこの程度の人間でしかないこいつに、俺の何が分かる?偉そうに説教垂れるほどの自信、その根拠なんて教師という立場に基づくものからしか求めようが無い、ただの大人に。こいつから教師という地位を取ったら一体何が残るんだ?
大学を出て、社会の厳しさの何たるかも経験しないまま、再び学校というぬるま湯の中に舞い戻って安穏としている。ただの世間知らずでしか無い、こいつに。
そんな奴が垂れ流す論理に、必ずしも俺が間違っていると断定できるほどの、強い正当性はあるのか。
「先生。俺はあいつが嫌いなんです」
俺が教師に対して使う敬語は、拒絶の意味を孕んでいる。
たかが世間知らずの公務員風情が、調子に乗って権力をふりかざし、生徒を自分の信仰に無理矢理服従させようとする、そのあまりの不当さ。
奴らに共通していることは、狂信的なまでに自らの正当性を信じていることだ。
逆に言えば、自らの誤りには無頓着であること。奴らの基本姿勢は、生徒の誤りを正すことである。それは最初から、生徒とは過ちを犯すものと決めつけているばかりでなく、反射的に自分を絶対的な正当性の中心に据えてしまっているという点で、どうしようも無く救えないのである。
「確かにね、君は頭もいいし、運動もできて、友達だってたくさんいる。そんな君から見たら、山原君みたいに、ちょっとぼんやりした感じの子は、見ててイラっとくるような所があるかも知れないけど。でもね、世の中、君みたいに何でもできるような人ばかりじゃないんだよ」
教師は真面目な顔でのたまう。少しでも真摯さを態度で示そうとしているのか、先ほどから必死な感じで俺の目を覗き込んでくるのが、ちょっと可哀想になるくらい演技くさい。しかもそのあまりの論点のズレっぷりには思わず笑ってしまいそうになる。教師の口から「世の中」という言葉が飛び出した皮肉にも笑えるが。俺はあいつが嫌いだって言ったんだ。あいつが俺より劣っているとかいないとか、なんでそんな話が出てくるのかまるで理解できない。
「別に、そんなの関係ないです。ただ、嫌いなんです。顔とか声とか仕草とか。気持ち悪くて」
「人を……見かけで判断しちゃいけないよ……」
また綺麗事か。つくづくこの人とは思想の差を感じるよな。それが世界の真理だと信じて疑わない相手と、これ以上言葉を交わすのは無駄なことだし。そろそろ帰りたいな。面倒くさい。
ちらりと腕の時計に目を落とすと、話し始めてそろそろ15分が経とうとしていた。
「じゃあどうすればいいんですか?俺が山原君を生理的に気持ち悪いと思ってしまうことは、俺の意思ではコントロールしようが無いことですし」
「でも、クラスのリーダーみたいな存在の君が、そうやってあからさまに彼を避けるような態度を取ってると、どうしてもそれが他の生徒たちに波及しちゃうんだよね。分かるでしょ。もうちょっと、周りに対して優しくなってみてよ。思いやりって、大事だよ」
「……」
ねっ?と小学生に言い聞かせるように念を押してくる教師を、ぶっ飛ばしてやりたかった。俺は何も言えずに、黙って考えていた。頷いてしまうことは簡単なのだ。だけどそれはしたくなかった。俺にだって意地はある。
尊敬してもいない、むしろ軽蔑すらしている大人から不当に植え付けられようとしている思想が、我慢ならなかった。従ったら終わりだ。従ったら俺は奴らの一部になる。
いつだって、奴らは汚いんだ。奴ら以上の正当性を論理的に主張しても、都合が悪くなると奴らは決まってそれを「屁理屈」だと言って切り捨てる。奴らがそう言ってしまえば、実際それは屁理屈になり下がる。
本当のところ、学校は社会の縮図なんかじゃない。「匣」だ。容れ物。押し込めて、奴らの理想通りに人形を、歪める。


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