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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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Whirlwind-8

「…彼は絶対結婚なんかしないわ…だから、残っているのは貴方しかいないのよ…。」
力ない声でそういった。そいつの事は、よく知っているらしい。
「彼は一人でいるほうが強いもの。彼は誰かと何かを分かち合うことなんてしない。」
何故かイラついた。この女に、確信を持って自分のことを語らせるその男に対する怒りがあった。無責任に対する怒りなのか…別のものに対する怒りかを考えはしなかった。たぶん、両方なのだろう。
「じゃあ俺はどうだって言うんだ?そのガキのどっちかと結婚すりゃ強くなるってのかよ。」
女はしばらく俺の顔を見つめていた。
「解らないわ…。」
そして、言った。
「解らない。」
そのうち、二人とも黙り込んで、馬鹿みたいに雨に打たれながら路地に立っていた。
「…ちょっと、来い。」
弾かれたように、女が顔を上げる。
「もう少し詳しく聞かせてくれ。」


別に、そんな展開を期待しているわけじゃない。とは言え、今日ほど部屋を散らかしっぱなしにしておいたことを後悔した日はなかった。
「あー…とりあえず…シャワーでも浴びててくれ…」
部屋に一歩踏み入れた瞬間、奥のほうになにか澱んだ空気があるのを、彼女は感じたに違いない。そして、それをいまからの数分間にどうにかしようと言う自分の意気込みも。彼女はありがとう、と呟いてバスルームに入った。
でかい袋を持ち出して、手当たり次第に突っ込む。突っ込んだときに皿の割れるような音がしたような気がするが、気のせいだと思うことにした。


「あ、あの!ねえ!」
片付け始めて1分も経たない頃、風呂場から悲鳴のような声が聞こえてきた。
「なんだ?」
用心しながら、ドアを2ミリだけ開ける。女の裸なんて夢の中でしか見ない(それもいつも血まみれになる)から、心の中ではどれだけ渇望していても、ここで紳士的な振る舞いを忘れてはいけない。そうとも、ここは紳士の国だ。
「このお風呂…どこで体を洗えばいいの?それとこの変な布はなんなの?」
若干イラついたような声がする。風呂場のカーテンと悪戦苦闘しているのか、カーテンレールがカチャカチャと音を立てていた。
「バスタブの上についているシャワーで体を洗うんだよ…風呂に入るの、初めてなのか?」
気分を害したように彼女が言う。
「失礼ね、お風呂ぐらい入るわ。…洗い場と浴槽が分かれてないなんて…なんて変わってるの…」
とかブツブツ言うのを聞き流しながら、ドアを閉めた。

温かい湯に温められて、少しリラックスしたように見える彼女は、先ほどまで食い散らかした後の食器が乗っかっていたソファに躊躇もせず座った。俺はせめてもの礼儀として、冷蔵庫に唯一無事な常態で入っていた缶ビールを渡した。彼女は、俺にふっと微笑みかけた。ぞく…と、戦慄が駆け上がる。あくまでいい意味で、だが。

「気が変わったのかしら?」

俺は黙って、狭い部屋の中でソファと向かい合う位置に置いてあるベッドに腰を下ろした。

「いや…。」

自分の分のビールの栓を開けて、口をつけずに持っていた。


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