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多分、救いのない話。
【家族 その他小説】

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多分、救いのない話。-3--2

 火口晃<ひぐちあきら>はその日、完全にオフだった。なので仕事に関わるケータイの呼び出しは当たり前のように無視した。
 だが夕方近くになり、さてそろそろどっかバーにでも行って女でも引っ掛けて適当に遊ぼうかなどと考え、完全に電源をオフにする直前。まるで計ったかのようなタイミングでコール音が鳴り響いた。
「マジ?」
 どう見てもヤクザにしか見えない、頬に傷痕の走る顔が、凶悪に歪む。無視しても良い、と言うか完璧に無視するつもりだったが、こういう時の火口に働く第六感は、火口にケータイの通話ボタンを押させた。
「あんた誰?」
 少し偽者っぽい関西弁なまりで話す火口の顔にはまだ休日を邪魔された不満の色が色濃く残っていたが、電話の相手が話し出した途端、それは完全に吹き飛んだ。
『もしもし? 私』
「社長? どないしはりましたん? ってか番号違いますやん、俺完璧無視するとこやったんですけど」
『どうでもいいでしょそんなこと』
 社長の声は硬く聞こえる。マジでなんかあったらしい。思考を切り替える。
『今自宅にいるんだけど、すぐ来れる? そう、ちょっと急病人が出て』
「もしかして慈愛ちゃんですか?」
 冷たい汗が流れる感覚。しかしすぐに払拭された。
『ううん、それはあまり関係ないけど。葉月先生、慈愛の担任がね、ちょっと倒れちゃって意識がないの』
「ちょっとって、それは救急車呼んだほうがいいんとちゃいます?」
『持病とか持ってないみたいだし。薬も持ち歩いてないみたいだし、脈や呼吸も安定してるから大丈夫だと思うけど。若いから生活習慣病ってこともないでしょうし。どっちにしろ、とりあえず運転手が必要なの。すぐ来てね』
 火口の返事も聞かず電話は切れた。相変わらずこの社長は人使いが荒い。主に火口に限ってだが。
「どうせ俺は社長の召使ですよーだ」
 ぶつぶつと言いつつ手際よく支度する。その顔は何故かニヤついていた。


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