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結界対者
【アクション その他小説】

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結界対者 第四章-16

 今朝、確か間宮は、ジルベルトの連中に会いに行く様な事をほのめかしていた。
 だとすると突然、教室を抜け出したとして、今向かう先は楽箱ということになる?
 いや、こいつは冷静に考えれば、容易く出せた筈の答えだ!
 実際に間宮自身が言っていた事だし。
 
 俺は、バカ元の突拍子もない話と、樋山が消えた時の記憶に惑わされていたのだろうか。

 とにかく、なんとかしなきゃ……

 間宮が朝に学校を出て、楽箱に向かったとしたら、今から追い掛けようにも到底追い付く事は無理だ。

 畜生、どうしたら……

 考えてもしょうがないから、とりあえず学校を出ようと昇降口に向かって走り始める。
 そして、走りながら再び、無駄と解りながらも考えて……
 俺は、ある事を思い出して携帯をポケットから取り出した。

 そうだ、サオリさんに……

 先日受けた、サオリさんからの着信の履歴が、まだ携帯に残っている筈。そいつを慌てて呼び出し、夢中で発信ボタンを押す。
 位置的に、店からならば、間宮を追い掛けて連れ戻せるかもしれない。
 頼む、繋がってくれ!

 呼び出し音にジラされながら、祈る様に電話を耳に押し当てる。
 すると、僅かな呼び出し音の直後

「はい、もしもし?」

 電話越しでもハッキリと判る、いつものサオリさんの声が、耳元で軽やかに響いた。

「ああ、サオリさん! 俺です、柊です!」
「あら、イクト君! どうしたの?」
「いや、その、間宮が一人で楽箱に、ジルベルトに向かったみたいで……」
「へ?」

 落ち着いて話したつもりだった。しかし、それはあくまでも「つもり」で、会話は全然噛み合わずに、結局俺は朝からの出来事を順を追って話さなければならなくなってしまった。

 くっ、時間が無いのに!

「それで、セリが楽箱に向かった、と?」
「ええ、おそらく」
「でも、妙ね」
「なにが、です?」
「だって、あの子が初めからそのつもりだったとしたら、学校へなんか行かずに家から直接行くと思うのよ」

 確かに。

「じゃあ、違うのかな……」
「それに、アナタにそれを話した時点で、あの子は一人では行かないわ」
「え?」
「わからないかなぁ…… ふふ、まあ良いわ、とにかく学校の外へは出ていないと思う」
「じゃあ、一体何処へ…… まさか、バカ本が言う通り、本当に消えちまったのかな」
「え?」

 一瞬、電話の向こうが途切れ、そのまま固まった気がした。
 かと思えば

「今、何て言ったの?」

 いつにない、激しい口調で問掛けてくる。


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