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結界対者
【アクション その他小説】

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結界対者 第四章-13

―6―

 朝七時に起きて、タイムベルへ。
 そのまま昼過ぎまで働いて、食事を兼ねた休憩をとり、夕方から再び働く。
 休憩の間は、サオリさんと間宮と他愛もない会話をしたり、備え付けの雑誌を読んだり軽く昼寝をしたりしながら過ごした。
 その間、三人の間に不思議とジルベルトや、この前の出来事に関しての話題は出てこなかった。
 俺は、あの電話のせいで、それらの事を口にする事は何となくいけない様な気がしていたし、おそらく間宮にとってもそれは同じ事だったのかもしれない。
 そして、夜九時には店を出て部屋に帰る、そんな生活を二日間続けた後、再び日常が俺の元へと戻ってきた。

 朝、タバコ屋の前に間宮が居て、どちらから声を掛ける別けでもなく、俺達は学校に向かって歩き始める。
 しかし、どことなく不自然さが残るのは、あの連休初日の出来事が原因である事に他ならなかった。

「なあ、間宮」

 声を掛け、再び黙る。そして、やはり止めようと思う。あの話しは、サオリさんに事情を告げられるまで……

「いいよ、話そう」
「……?」

 間宮の意外な反応に、俺は戸惑いながら思わず歩道の途中で足を止めた。
 間宮も止まり、こちらに向き直りながら、言葉を続ける。

「この前の連中、ジルベルトの奴らね」
「お前、どうしてそれを?」
「昨日、偶然、名刺を見つけたのよ。ジルベルトって書いてあった」
「そうか……」
「そう。お姉ちゃんね、奴らにアタシの事で何か言われたみたい」
「何を?」
「よく解らないけど、そんな気がする。そして、それは、あの海に現れた人狼に関係があるかも」
「バカな、そんな事……」
「でも、柊だって、少しはそう思ったでしょ?」

 思わず黙る。

 確かに、それはそうなのだ。 しかし……

「アタシ、確かめるわ!」
「確かめるって、何を!」
「近いうちに、ジルベルトの連中に直接会ってみる」
「それは止めろ!」
「なんで?」
「だって……」

 あの夜、サオリさんは言ったのだ。『極力、アナタにもセリにも、一人で居て欲しくないの。そうね、お店を手伝って貰えると助かる。バイト代はちゃんと払うから。でないと今は、ジルベルトの人間が……』と。

「一人で直接は危険だ、もしどうしてもと言うなら、俺が……」
「大丈夫」
「……?」
「これは、たぶん、アタシの問題だから」

 そう言うと間宮は、何とも言えない、胸が苦しくなる様な笑顔を此方に向けた。
 俺はどうする事も出来ず、ただそんな間宮を見つめる。
 もしかしたら、また間宮は何かを解ってしまったのだろうかと思いながら。


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