投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

結界対者
【アクション その他小説】

結界対者の最初へ 結界対者 74 結界対者 76 結界対者の最後へ

結界対者 第四章-11

「ちょ…… サオリさん、どうしたんです!?」

 慌ながら声を掛け、その緊張の狭間に割って入る。
 しかし、サオリさんは姿勢を崩す事無く、対する二人が後に退きながら

「では、よい返事を期待させて頂きましょう」

と軽く頭を頭を下げるまで、そのままだった。
 そして、その場から二人が離れるや否や、踵を返し店の中に戻ると、何やら容れモノを抱えてすぐに戻って来て、そのまま中身を鷲掴みにして店の前へと振り撒き始める。

「お…… お姉ちゃん、何やってるの?」

今度は間宮が問掛け、その声にようやくサオリさんは我に返った様に

「あ、あら、おかえりなさい」

目を丸くしながら、言葉を返した。

「おかえりなさい、じゃないわよ! 一体何をやっているのっ!」
「え? ああ、これ? 決まってるじゃない、塩を撒いてるのよ」
「塩って…… どうしたの? さっきの奴ら、何者?」

 ジルベルトだ。
 しかし何故、奴らが此処に……

「あいつらね、教材の押し売りなのよ。ほらセリ、あなたは来年受験でしょ? あいつら、何かでそれを調べて、わざわざ店の暇な時間を狙って来たらしいんだけど、あんまり失礼な事を言うものだから、ついカッとなっちゃって」

 嘘だ。

 何故、嘘を言う必要がある?
 サオリさん、アンタ、ジルベルトの連中と何があった? 何を言われた?

「嘘ね」
「……セリ?」
「お姉ちゃん、嘘をついてる」
「なんで? どうしてそう思うの?」
「いつも言ってるじゃない。アタシ、なんとなく色々な事が判る時があるの。 今のアイツら、誰だか良く判らないけど、お姉ちゃんが嘘をついてるのは判る」

 言われて、サオリさんの挙動がピタリと止まる。
 そういえば今日、出掛ける前にも、間宮は同じ様な事を言っていた。

『よく解らないけどさ、対者を始めからアタシ、こういう事って結構あるのよ。たまにお姉ちゃんの事も、解る時がある。ふふっ、力の副作用みたいなものかしらね』

 沈黙は暫く、俺が何かフォローをしようと口を開こうとした直後に、サオリさんの意外な一言によって破られた。

「ごめんね、そうだったわね」
「……お姉ちゃん?」
「お姉ちゃん、嘘をついちゃった。でもねセリ、アイツらの事は気にしないで欲しいの。アナタには本当に関係の無い事だから」

 言われて、間宮が黙り、再び沈黙が生まれる。しかしそれは長くは続かず

「解った、お姉ちゃんが言うなら」

と、無理矢理微笑んだ間宮によって終り、その場には俺の声にならない疑念の叫びだけが残った。
 
 サオリさん、一体何を……


結界対者の最初へ 結界対者 74 結界対者 76 結界対者の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前