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是奈でゲンキッ!
【コメディ その他小説】

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特別興行 がんばれ田原くん! 『是奈と愉快な中間たち 2』 後編-10

 廊下の突き当たりまで来ると、そこには『分娩室』と書かれた大きな観音開きの扉があり、扉の前には一人、気の弱そうな男の人が、オロオロと歩き回っている姿が見て取れた。最初に出会った旦那であろう。
 旦那は扉の前を行ったり来たりを繰り返し。
 嘉幸は急ぎ、そんな旦那に近づくと。
「どうですか、生まれましたか?」
 そう尋ねていた。
 旦那は少し緊張したように、
「やっやあ、さっきの学生さん。……それがぁ、まだみたいなんだよ」
 そう嘉幸に説明する。そしてあたかも会社の重役にでも頭を下げるかのように、嘉幸に向ってペコペコとお辞儀を繰り返していた。
 嘉幸はホッと胸を撫で下ろし、
「よかったー、まにあったぁ」
 と、一息吐く。そうして分娩室の前の廊下に置かれている、ソファーベンチに腰を下ろすと、壁に寄りかかって、ぼーっと、目の前の扉を眺めていた。
 丁度そこえ都子が用を終へ、戻って来た。
「どうっ、赤ちゃん生まれたぁ?」
 都子も心配そうに嘉幸に顔を近づけ、聞いていた。
「いや、まだみたいだが…… おそらくは時間の問題だろう」
 腕組みをしながら嘉幸はそう言い。それを聞いて都子も「ふーん……」と鼻をならすと、嘉幸の隣に並んで、腰を下ろしていた。
 清美は嘉幸を挟んで反対側に正座して座り、持っていたアニメのトレーディングカードに向って、
「デュアルオーロラウェ〜〜ブ! プリクラメタモルフォーゼぇぇ〜〜!!」
 と、繰り返し祈っていた。どうか無事に赤ちゃんが生まれますようにと、清美なりに一生懸命なのだろうが。……って言うか清美ちゃん、ここでその呪文は違うだろう!
 旦那は相変わらず、扉の前の廊下をウロウロと、行ったり来たりしている。
 そのうち貧乏ゆすりをしながら、旦那のうつ病めいた、行ったり来たりを見ていた都子が。
「ああーもう! イライラするなぁー!」
 そんなことを叫んで立ち上がると。なにを思ったか旦那の後に付いて、うろうろ歩き始めたではないか。
 ある時は旦那と平行に、ある時は旦那と交互に、時々立ち止まっては、なにやら考えたり。そうかと思いきや、今度は早歩きになってお互いを追い越したり。
 嘉幸は、そんな二人が目の前をうろうろと歩き回っている姿が、なんだか小学生のころによくやっていた、TVゲームの『スーパー・マリ男・ブラボース』の二人同時プレイでも見ているような気分にもなる。なにげに頭の中で ”ツズッツズズッツ・・・!”なんてBGMが聞こえてきそうであった。 
 そんな事をしながら三者三様ならぬ、四者四様、今か今かと待ちわびていると、
”ホンギャーホンギャー!”
 と元気な赤ちゃんの泣き声が、分娩室の中から廊下まで響いて来た。
 その声に一同、一瞬息を飲みもする。
 すると。
「おめでとうございます! 元気な女の子ですよ!!」
 と看護婦さんが一人、分娩室から出てきて旦那にそう告げたのだった。
 嘉幸達は『やったー!』と一斉に叫び声を上げ。
 都子などは旦那と手に手を取って、まるでフォークダンスでも踊っているかのごとく、飛び跳ねていた。
 清美は持っていたカードを細かく千切ると、それを紙吹雪にして飛ばし。
 嘉幸はガッツポーズのまま、滝のように感動の涙を流していた。
 四人は我を忘れて、大はしゃぎである。
「こらぁ! 貴方達! 病院内は静かに!!」
 突然の轟声に、嘉幸達は青くなり、だるまさんが転んだ! を唱えられたかのごとく、固まって動かなくなる。再び分娩室前は静かになったが。どうやら嘉幸達、またまたあの怖〜い看護士長さんに叱られてしまった様子であった。


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