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是奈でゲンキッ!
【コメディ その他小説】

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特別興行 がんばれ田原くん! 『是奈と愉快な中間たち 2』 後編-1

 嘉幸は救急車の後を追うようにして、都子をおんぶしたまま、丘の上公園前の道を走りぬけ、表通りへと出て来ていた。
 普段彼女が使用していた戦闘武装強化タイプのボディ(以前、是名によって破壊された躯体)なら、重くてとてもじゃないが背負う事など出来なかっただろう。がしかし、本体修理のため仮に使用しているバックアップ用のダミー躯体は当然一切の武装を持たず、その分お値段もリーズナブルであり、造りもチャチかった。
 そのお陰であるかどうかは解からなかったが、今の都子は普通の人間である同年代の女子にくらべても、軽かったかもしれない。が、いかに都子の身体が軽いからと言っても、いかに嘉幸が自分の足に自信が有ったからと言っても、とうてい救急車のスピードに敵うわけはなく、車はあっと言うまに走り去って、見えなくなっていた。
 しかしながら救急車の向かった先は見当がつく。
 嘉幸は表通りの角を、救急車が曲がった方角と同じ方向に曲がると、その先にあるであろう『藤見晴市総合病院』へと進路を取っていた。なぜなら、急患などはたいがいそこへ運ばれるはずの、大きな病院だったからである。 が、……都子の場合、民間の病院へ運ぶより、悪の組織の本部へ連れて行ったほうが良いのではなかろうか。そう思う気持ちは、この時、嘉幸の中には全く無かった様子である。


 表参道をひた走り、間も無く行くと別の大きな国道と交わる交差点にたどり着く。嘉幸は目の前の赤信号に急ぐ足を止め、信号が青になるのを、今か今かと待ちわびていた。
 そんな彼に向かって周りに居る人達が、いろんな意味で視線を向けて来たりもする。特に嘉幸が背負っている都子を不審に思うのか、とりわけ彼女に向かう視線は多い。勿論そんな人々の視線が嘉幸にも容赦なく突き刺さってくるのを、嘉幸自身も感じて止まなかった。
 特に。
『なんだコイツ、なにやったんだ』とか、
『昼間っから、いちゃついてんじねーよ!』とか、
『やだわぁあの女の子なーに、はしたない』とか、
『ママー! 変なお兄ちゃんが、変なお姉ーちゃんをおんぶしてるよ!』
『見ちゃいけません!!』
 そんな声があちらこちらから、ぼそぼそ、ひそひそと聞こえてくると。嘉幸は、
(俺にだって事情ってもんがあるんだよ。好きでこんな事やってるわけじゃねーよ!!)
 などと心で叫ぶも、顔が真っ赤だったりもする。
「これって、超恥ずかしぃやん!!」
 などと愚痴を零したくもなるのも、心情だろう。
 そんな嘉幸の気持ちを知ってか知らずしてか、おそらく何にも考えていないであろう都子は、少しぐったりしながらも、
「あ〜もう、駄目かも……」
 なんて、白目をむいて、口を開けて、嘉幸の背中によだれを垂らしまくっていた。
「あーもう、早く青になんねーかなぁ」
 脚ふみをしながら、嘉幸がイライラしているまさにその時だった。
「田原くん? ……田原くんじゃないの!」
 聞き覚えのある声に嘉幸も、都子をおぶったまま、後ろを振りかって見ていた。
 すると、見れば紺色のセーラー服を着た女の子が、嘉幸達を唖然とした顔で見つめているではないか。
「あっ! やあぁ、朝霞さん」
 どうやら嘉幸を呼び止めたのは、清美の姉『是奈(ゼナ)』のようであった。
 本当ならば今日のバーベキューに是奈も誘いたかった嘉幸ではあったが、その当人である是奈、なぜか今日に限って用事が出来たとかで、泣く泣く不参加にはなったものの、こんなところで合えるとは、嘉幸も驚きである。


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