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終(つい)の春〜サクラフブキ
【純愛 恋愛小説】

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終(つい)の春〜サクラフブキ-1

バッグに軽い荷物を詰め終え、部屋を見渡す。全ての荷物を新たな住居へと送った今、八畳ほどのフローリングは見事なまでに日光を部屋の中へと招き入れている。

昨日は友達の部屋に泊めてもらい、すでに集まっていた悪友達と夜が更けるまで飲んだ。


大学生活



私は満足だった。

名残惜しい気持ちはもちろんある。

此方に残る友達、何時も緩い態度だったバイト先のみんな、マンション中の人を集めちゃってバーベキューなんか始めちゃう気のいい大家さん。

人間は、いいにしろ悪いにしろ、強く感情に残ったことは忘れないらしい。

みんな、みんな大切で。きっと私は忘れないだろう。

四年間を支えてくれた部屋に礼をし、部屋を後にした。




まだ朝と呼べる時間帯の道を一人歩く。

まだ春休みなのか、子供達の姿がちらほらと見える。

暖かい春の日。最近は温暖化のせいか知らないけど、私が子どもの頃よりも暖かくなった気がする。

何かが頬に触れる。見上げると桜が咲いていた。




待ち合わせの場所へ向かって歩いていると、少し前に一組の男女が見えた。

高校生だろうか、手を繋いで駅の方へと歩いていく。

遠くから見てもわかるくらい、二人は幸せな顔をしていた。

彼らはこれからいくつもの季節を巡るだろう。どうか、彼らにも幸せになって欲しい。そんなことを考えながら、待ち合わせの場所へと急いだ。




桜が咲き乱れる川沿いの土手を歩く。

早いね。

もうあれから七年経つんだ。

あの時は、一生彼と会うことが出来ないなんて思ってた。

だけど……。




ふと足を止める。

黒の単車がそこに停められていて、その横には桜を見上げるあの人の姿。

彼はこちらに気付くと、優しく手を振って手を上げてくれた。

だけど、今こうやって私は彼と出会えた。


『なんだ、スカートじゃあないのかよ』
「……待った?」
『そりゃあもう。まぁおかげで早朝花見と洒落込めた訳だが』
「もう八時でしょ。全然早朝じゃないよ」


彼はそれもそうかと軽く笑うと、風が吹いた。

花を咲かせていた桜から、いくつかの花びらが飛んだ。


桜吹雪。


まるで、あの時みたいで。


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